社用車・社有車を使用する際のルール作成のポイントを解説

社用車は業務で使用する際は、管理責任や法的リスクを伴うため、適切な運用ルールが必要です。

本記事では社用車の運用ルールの重要性から具体的な運用ルールまで詳しく解説します。

従業員の安全や企業のリスク回避のため、ぜひ最後までご覧ください。

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社用車・社有車の運用ルールの必要性

社用車の運用には明確なルール策定が不可欠です。

ルールが必要となる理由を詳しく解説します。

従業員の安全のため

複数の従業員が同じ車両を使用する環境では、統一された運用ルールが安全運転の基盤です。

運転前の点検項目や確認事項を明確にすれば、事故のリスクを減らせます。

また、運転時の禁止行為を明確に定めることで、不注意運転やルール違反の抑止が可能です。

体系的な安全管理体制を整備し、従業員が安心して業務に専念できる環境を実現しましょう。

スムーズな事故対応のため

万が一事故が発生した際に備えて、対応手順をルールとして定めておくことが重要です。

事故時の連絡先や報告書の提出手順を明確にしておけば、従業員が混乱せず迅速に対応できます。

また、軽微な接触事故や車両の損傷についても報告基準を設けておくと、隠ぺいを防ぎ、適切な修理・メンテナンスが可能です。

ルールの整備によって企業の信頼性を保つだけでなく、従業員に安心感を与える効果も期待できます。

法的リスクを軽減するため

社用車に関連する法的リスクを軽減するためには、明確な運用ルールが欠かせません。

従業員が業務中に事故を起こした場合、企業は『使用者責任』や『運行供用者責任』に問われる可能性があります。

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法第七百十五条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

引用:自動車損害賠償保障法第三条

しかし、ルールの明確化や日常的な従業員への交通安全教育によって、企業の責任が軽減される場合もあります。

また、私的利用の制限や安全運転の推奨などをルールとして徹底すれば、交通事故リスクの軽減も可能です。

明確なルールにより企業を法的トラブルから守り、事業の継続性を確保する基盤を築けます。

社用車と社有車の違い

企業で使われる車は、「社用車」以外に「社有車」もあります。

主な違いは着目する観点にあり、社用車は『誰が使うか』に着目していますが、社有車は『誰が所有しているか』に着目した概念です。

社用車は業務のために使用される車両を指し、企業が所有する車両だけでなくリース車両やレンタカーも含まれます。

一方で、社有車は企業が所有する車両を指し、車検証の所有者欄に企業名が記載されている車両です。

社用車社有車
所有形態所有形態を問わない企業が所有する車両
使用目的業務のために使用される必ずしも業務専用ではない

社用車・社有車を使用する際に定めておきたいルール

社用車を安全かつ適切に運用するためには、明確なルールの設定と従業員への周知が重要です。

以下、具体的なルールのチェックリストとしてお使いください。

□ 鍵の管理について
□ 使用状況について
□ 喫煙について
□ 洗車・清掃について
□ 給油について
□ 日常点検整備について
□ 私的利用について
□ 事故発生時の対応について

それぞれ詳しく解説します。

鍵の管理について

社用車の鍵は、セキュリティ管理の要です。

専用のキーボックスを設置し、使用記録簿と合わせての管理が望まれます。

また、責任者による鍵の保管や貸し出しを許可制にすることで、無断使用や私的利用を防止できます。

加えて、鍵に紛失防止タグを取り付ければ、万が一紛失した際の早期発見が可能です。

鍵の管理ルールを明確にし、不正利用の防止と車両管理の効率化を図りましょう。

使用状況について

社用車の使用状況の把握は、トラブル防止や効率的な運用に直結します。

例えば、使用前後に運転日報を提出する仕組みを導入すれば、誰がどの車両をいつ使用したのかを一目で確認可能です。

日報には以下の情報などを記録しましょう。

  • 走行距離
  • 使用時間
  • 目的地
  • ドライバー名

さらにGPSトラッカーを活用すれば、リアルタイムで車両の位置情報を管理できるため、緊急時の対応にも役立ちます。

社用車の運用には、透明性のあるルールの設定が重要です。

喫煙について

社用車内での喫煙は、禁止するのが一般的です。

なぜなら、走行中の喫煙は注意力散漫の要因になり得るためです。

また、車内での喫煙は清掃コストの増加や企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

喫煙に関するルールを明文化し、違反時の対応も定めておきましょう。

洗車・清掃について

社用車は企業の看板としての役割も果たします。

定期的に洗車と清掃をおこなうことで車両を清潔に保ち、企業イメージの向上も目指せるでしょう。

また、小傷が目立って気づきやすくなるため、軽微な自損事故の抑止にもつながります。

例えば、毎月第一営業日を洗車日と定め、担当者を割り当てるなどのルールを定めましょう。

特にお客様を乗せる機会がある車両は、より頻繁な清掃が必要です。

給油について

燃料管理の効率化のため、給油のタイミングと手順を明確にします。

例えば、燃料計が半分を下回った時点で給油するルールを定めれば、ガス欠のリスクを減らせるでしょう。

また、法人用ガソリンカードを導入し、使用状況を確認できる仕組みを作れば、不正利用の防止にもつながります。

運用コストを最適化するためにも、適切な給油ルールを設定しましょう。

日常点検整備について

日常点検整備は、安全運行の基盤となる重要な作業です。

チェックリストを活用して、定期的に確認するルールを設定しましょう。

主なチェック項目は以下です。

  • ブレーキ液の量
  • 冷却水の量
  • エンジン・オイルの量
  • バッテリ液の量
  • ウインド・ウォッシャー液の量
  • ランプ類の点灯・点滅
  • タイヤの亀裂や損傷の有無
  • タイヤの空気圧
  • タイヤの溝の深さ
  • エンジンのかかり具合・異音
  • ウインド・ウォッシャー液の噴射状態
  • ワイパーの拭き取り能力
  • ブレーキの踏み残りしろと効き具合
  • 駐車ブレーキの引きしろ
  • エンジンの低速・加速状態

従業員に点検方法を教育し、トラブルを未然に防ぎましょう。

日常点検整備の徹底により、事故や故障のリスクを大幅に減らせます。

日常点検整備について解説した資料をご用意したので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

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私的利用について

社用車の私的利用は、原則として禁止するのが望ましいです。

私的利用中の事故でも、企業が法的責任を負う場合があるため運用リスクが高まります。

ただし、例外的に認める場合は、使用目的や使用時間、距離制限などの明確な条件の設定が重要です。

私的利用を許可する際は、事前申請制とし責任者の承認を義務付けましょう。

私的利用のルールの徹底により、不適切な使用を防ぎリスク管理を強化できます。

事故発生時の対応について

事故発生時の初動対応手順を明確にし、従業員に周知します。

負傷者の救護や警察への通報、上司への報告など、優先順位をつけた行動指針を定めましょう。

また、事故報告書の提出や再発防止策の検討など、事後対応の手順も定めておきます。

示談交渉を従業員が独断でおこなうことを禁止し、対応窓口を明確にすればトラブルを減らせます。

車両管理規程に社用車・社有車の運用ルールを定める

社用車や社有車の運用ルールは、車両管理規程に定めます。

車両管理規程とは、社用車や社有車の運用に関する基本的なルールを体系的にまとめた社内規定です。

規程には安全運転管理者の設置や業務内容、私的利用の可否、事故発生時の対応方法など、必要な事項を明確に定めます。

また、法改正や企業方針の変更に応じて、定期的な見直しと更新、従業員への周知徹底が欠かせません。

適切な車両管理規程の整備は、従業員の安全のための重要な役割を果たします。

安全運転管理者の設置について

安全運転管理者は道路交通法第七十四条の三に基づき、一定台数以上の自動車を使用する事業所に設置が義務付けられている役職です。

自動車の使用者(道路運送法の規定による自動車運送事業者(貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)の規定による貨物軽自動車運送事業を経営する者を除く。以下同じ。)、貨物利用運送事業法の規定による第二種貨物利用運送事業を経営する者及び道路運送法第七十九条の規定による登録を受けた者を除く。以下この条において同じ。)は、内閣府令で定める台数以上の自動車の使用の本拠ごとに、年齢、自動車の運転の管理の経験その他について内閣府令で定める要件を備える者のうちから、次項の業務を行う者として、安全運転管理者を選任しなければならない。

引用:道路交通法第七十四条の三

具体的な対象事業所は以下の通りです。

  • 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している
  • その他の自動車を5台以上使用している

安全運転管理者の主な業務には、ドライバーの状況把握や運行計画の作成、ドライバーの状態確認、酒気帯び確認の記録と保存などがあります。

また20台以上の車両を保有する事業所では、副安全運転管理者の設置も必要です。

選任後は15日以内に都道府県公安委員会への届出が必要となり、人事異動などで変更が生じた場合も速やかな手続きが求められます。

安全運転管理者は、従業員の安全と企業の車両管理体制の中核を担う重要な役割です。

まとめ:社用車・社有車の使用には適切な運用ルールを定めよう

社用車や社有車の導入と運用には、適切なルール設定と管理体制の構築が不可欠です。

企業にとって社用車や社有車は、業務効率の向上などのメリットがある一方で、管理責任や運用コストなどといったデメリットも伴うため、車両管理規程を整備し明確なルールのもとでの運用が重要です。

社用車の運用ルールを見直し、安全で効率的な運用体制を整えましょう。

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