2024年バックカメラ義務化で知るべきポイント徹底解説|既存社用車への対応は?

近年、先進技術や新素材などのテクノロジーを駆使した、より安全でより便利な車の開発が進められています。

10年前の車とは比べ物にならないほど性能が進化しており、今の時代に則した新しいルールの再定義が常に求められていますが、そんななか、国土交通省が定めた新たな保安基準が施行されました。

2024年11月以降に発売される全ての新車にバックカメラ(検知システムまたはミラー)の装着が義務付けることとなります。

この記事では、バックカメラ義務化において知るべきポイントや、既存の社用車への対応は必要なのかなど、気になる情報を徹底解説していきます。

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2024年バックカメラ義務化の概要と背景

当初、2024年5月1日から施工される予定だった保安基準の改正ですが、能登半島地震の影響により新車生産に遅れが生じたため、2024年11月1日に延期されたものの、現在ではすでに施行されています。

まずは、その概要の詳細とその背景にある義務化に至るまでの経緯を詳しく紹介していきます。

後退時車両直後確認装置とは?

今回の改正で、装着が義務付けられたのは「後退時車両直後確認装置」についてです。

この後退時車両直後確認装置とは、「バックカメラ」「バックモニター」など後方の安全を確保する装置のことを指します。

このうち、乗用車の新車出荷台数に対するバックカメラ装着率は年々上昇しているようです。

国交省が2023年に行った「ASV(先進安全自動車)技術普及台数調査」によると、バックカメラの装着率は普通乗用車で77.3%、軽自動車では55.1%となっており、現在ではさらに増えていると考えられます。

参考:ASV技術普及台数調査|国土交通省

バックカメラ義務化の目的

バックカメラ義務化の実施は、運転者からの後方視覚を確保する事によって、後退時の事故を防止するというのが目的です。

2008〜2017年の10年間を対象に、四輪車後退時の事故を分析した交通事故総合分析センターの交通事故分析レポートによると、駐車場内をはじめとした「低速走行時」に起きる事故が多く起きており、後退操作時には注意が必要です。

出典:交通分析レポート|交通事故総合分析センター

後退事故の事故データ

さらに、自動車のバック事故件数は減少傾向にはあるものの、全死傷事故に占める構成率は増加傾向にあり、重大事故につながる可能性は依然高い水準にあります。

事故を起こした運転者年齢層を見ると、全体的に偏りは見られないものの、運転スキルの低い10〜19歳と、認知能力が欠如してくる60〜69歳にかけてやや多く発生していることがグラフから見てとれます。

出典:交通分析レポート|交通事故総合分析センター

国土交通省の基準と新しい制度の発表内容

新制度では、バックカメラ義務化の適用範囲は「自動車」のみとなっています。

二輪、三輪、大型特殊、小型特殊など、後退時車両確認装置を備えることが困難である一部の車両は除かれます。

道路運送車両の保安基準、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正は以下の通りです。

  1. 車両後退時における事故を防止するために、車両直後を確認できる装置の要件に適合する後退時車両直後確認装置(バックカメラ、検知システム又はミラー)を、自動車に備えなければならないこととする。
  2. ハイブリッド自動車を含む電気自動車に対する電気安全対策を強化するため、冠水走行等の水に対する暴露試験や、電気システムに異常が発生した場合に運転者に対して警告する要件等を追加する。

後退時車両確認装置の要件

後退時車両確認装置は、以下の要件を満たさなければなりません。

  1. 車両直後における、特定エリア内の障害物を確認できること
    (特定のエリア:車体の後方0.3mの位置から3.5m、高さ0.8mの範囲まで。検知システムのみで障害物を確認する際の基準は一部異なる)
  2. 確認の手段は、カメラ、検知システム、ミラーによること
    (一部の車種に関しては、目視、検知システムとミラーの組み合わせによる確認。一定の条件下における確認手段の組み合わせも可能)

参考:車両後退時の事故防止のための国際基準を導入します|国土交通省

2024年5月ではなく11月施行へ変更|背景とこれまでの経緯

自動車は、受注から納車まで一定期間を要することから、自動車メーカーは、生産に必要な期間を考慮しながら、自動車を受注していますが、能登半島地震の発生により、自動車の生産に関連する企業が被災し生産の遅れが生じてしまいました。

受注済みの自動車の生産が完了しない状況となったことから、国土交通省は特例措置として5月から順次適用される基準の適用日を11月へ延期することになりました。

現在は施行済みとなっています。

参考:能登半島地震等を踏まえた自動車の安全・環境基準の適用延期|国土交通省

バックカメラ義務化の対象と対象外車両

新たな保安基準の改正では、国内に存在する全車両に後退時車両確認装置の装着を義務付けているわけではありません。

後退時車両確認装置を備えることが困難である一部の車両は除かれます。

ここでは、義務化の対象車両と対象外車両について、詳しく解説していきます。

義務化対象となる車両の条件

2024年11月からバックカメラ装着義務化の対象となる車両は、新型車・継続生産車を問わず、それ以降に販売された全ての新車に、原則としてバックカメラの装着が求められます。

乗用車をはじめ、バス・トラックなども含む四輪自動車が適用範囲となります。

なお、2024年10月までに販売済みの車両については義務化の対象外となります。

古い車や生産継続車はどう対応すべき?

メーカーが継続して新車を販売している既存モデルについては、要件を満たした後退時車両確認装置を取り付ける必要がありますが、既存の車両については取り付けが義務付けられていません。

しかし、義務化の対象外とはいえ、バックカメラは安全対策として有効な機能ですので、まだ取り付けがされていない車両があれば、この機会に後付けを検討するのがよいでしょう。

特に、社用車として、乗用車やトラックなどを保有する企業においては、安全運転を推進するためにも、バックカメラやモニターなど安全装備の見直しが必要になります。

トラックや軽自動車などの特例について

取り付けの難しい一部の車両は、特例として取り付け義務が免除される場合があります。

主に二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、被牽引自動車についてもバックカメラ義務化の対象外となっています。

しかし、これらに取り付けが可能なようであれば、後付けを推奨します。

バックカメラ導入の注意点とチェックリスト

バックカメラ導入に際して、いくつかの注意点とポイントがあるので詳しく解説していきます。

モニターや画質、視認性確保など選定のポイント

バックカメラは付いていればどんな物でもいいわけではなく、改正された要件をきちんと満たしている必要があります。

検知システムのみで障害物を確認する際の基準は一部異なりますが、

  • 車体の後方0.3mの位置から3.5m
  • 高さ0.8m

の範囲までを確認できるものが要件となっており、これを満たすバックカメラやモニターを選ばなくてはなりません。

業者に依頼する場合の注意点と事前準備

自動車販売店や用品店にて取り付けを依頼する場合は、まずは最初に所有している自動車にバックカメラを取り付けることが可能かどうかを確認しましょう。

メーカー純正のカーナビに、追加でメーカーオプションのバックカメラを取り付ける場合や、オプションで取り付けたカーナビに社外品のバックカメラを取り付ける場合など組み合わせは多岐にわたります。

取り付けが可能かどうか自身で判断できない場合は、修理工場やカー用品店などで相談をおこなってください。

レンズ画角や性能を把握して正しい選択を

バックカメラだけでも数多くの製品が販売されていますが、これまで義務化の対象ではなかったため一律の基準がなく、その性能はバラバラです。

バックカメラのレンズ画角によって、後方を確認できる範囲は大きく変わってきます。

カメラの画角や性能が不安な場合は、対応する製品かどうか販売店や販売元へ確認してから購入しましょう。

ナビ無し車・オーディオレス車への対応方法

業務用の社用車やトラックなどでは、カーナビやオーディオが最初から設定されていない自動車も多く存在するのではないでしょうか。

それらが装着されていない車でも後から対応する方法がいくつかあるので、詳しく解説していきます。

ナビ無し車でも装着可能なモニターや装置

カーナビやモニター装置のない車両でも後退時車両確認装置の取り付け義務を後付けで満たすことができます。

後退時車両確認装置として装着できるのは、汎用品のバックモニターや障害物検知システム、目視で要件を満たす事のできる後方確認ミラーの取り付けです。

モニターとなるカーナビを取り付けない分、費用を大幅に抑えることが可能ですが、車両への取付位置や製品選びなどは専門家に相談するのが安心です。

汎用品バックモニターの選び方

バックカメラを導入する場合には、その映像を映すバックモニターがセットで必要になります。

汎用品のバックモニターを選ぶ上で大切なのは、要件を満たす事のできる自動車用バックモニターを選ぶことです。

バックカメラの性能だけでなく、車両への取り付け位置に対して要件を満たすことができるか、確認しておきましょう。

オーディオレス車でも要件を満たす方法

オーディオレス車に後付けで取り付ける後退時車両確認装置として、最も手軽な方法は、目視で要件を満たす事のできる後方確認ミラーの取り付けです。

主にドアミラーや車両後部に補助ミラーを取り付けることで、要件を満たすことができます。

安全運転向上に対するバックカメラの効果

後部を確認できるバックカメラやセンサーを自動車に取り付ける事によって、運転席からの死角を確実に減らすことができます。

バックカメラによって運転席からの死角を減らすことで、どれだけ交通事故を防止できるかというのを詳しく解説していきます。

高齢者や歩行者の死角を減らす技術

2022年にJAFがおこなったテストによると、車体の真後ろにある背丈の低いものをいち早く発見するためには、バックカメラが目視や各ミラーよりも有効である結果が出ています。

死角に入ると視認がしにくい高齢者や子どもなど、車両の真後ろの歩行者に対しては大きな効果が期待できるのです。

参考:バックカメラに死角はないのか?|JAF

後方視認性と視界確保の安心ポイント

ボディによる死角は、車のタイプによって大きさが異なります。

乗用車でいえば、コンパクトカーやミニバンは前方の視界が広い一方で、セダンやステーションワゴンなどに比べて車体周辺の死角が大きくなります。

バックカメラを取り付けることで、車両真後ろの死角を減らすことにつながりますが、車両の真後ろから左右にずれた範囲や真横の視界はドアミラーでしか十分に確認することができない点に注意が必要です。

特にミニバンは後方と助手席側に死角が大きくなる傾向にあるので、バックカメラの映像だけで安全確認が済んだと安心することなく、目視やミラーも活用して車両周囲の安全をしっかりと確認しましょう。

バックカメラ義務化に伴い、今後はカメラで確認した映像で後方確認をするのが当たり前になってきますが、これまで通り、ドアミラーをはじめとした目視での安全確認を忘れないように心がけましょう。

事故予防のために必要な装備とは?

交通事故防止に役立つ安全装備は義務化されたバックカメラだけではありません。

現在では、先進安全自動車(ASV)という先進技術を利用してドライバーの認知・判断・操作をサポートし、安全を支援するシステムを搭載した自動車も数多く登場しています。

代表的な機能としては、「衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(誤発進抑制制御機能)」、「車線逸脱警報装置」など、交通事故防止に役立つ装備がたくさん登場しています。

自動車を利用する環境に合わせて、必要な装備を吟味し備えることが大切です。

参考:ドライバーを支援する最新システム「先進安全自動車(ASV)の紹介」|JAF

車検前に確認すべきバックカメラ関連項目

定期的に合格しなければならない自動車検査ですが、改正が実施された2024年11月以降に新車販売された自動車に乗っている場合は、バックカメラについても検査前に確認が必要です。

バックカメラの場合、レンズに割れや汚れはないか、映像がカーナビやモニターに正常に出力されているかを確認します。

センサーの場合は、障害物が近接した時に正常に検知しているか、センサー部分が汚れていないかを確認しておきます。

ミラーの場合についても、汚れや傷、ミラーの角度による視野角の調節が適切かを確認しておきましょう。

まとめ|バックカメラを取り付けても安心は禁物

ここまでバックカメラ義務化について解説してきました。

バックカメラ義務化によって、今後、後退時の事故件数はきっと減っていくものと思われます。

しかし、バックカメラでは見えない死角も存在するので、バックカメラがあるからと慢心せず、これまで通りミラーや目視での後方の安全確認をしっかりとおこない、これまで通り安全運転に努めなくてはなりません。

JAF交通安全トレーニング」では、継続的に安全意識を養うためのe-ラーニングコンテンツを多数用意しています。

駐車場内での車両後退時に潜む危険予知コンテンツなど、社用車を運転する際の安全な運転知識を養うことができます。

安全運転をしっかりおこなえる人材をひとりでも増やすことができれば、交通事故による企業イメージ毀損などのリスクを減らすことにつながります。

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JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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オノデラマコト
小野寺マコト
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。グラフィックデザイナーとして就職するも、気づけば乗り物全般に濃く携わる編集者の道へ。出版社を渡り歩き、独立後は若年層向けの雑誌創刊や、メディアローンチを手がけるなど、特にZ世代への訴求方法を模索。交通安全普及を考える一方で、映像分野にも明るく、マルチなコンテンツクリエイターとしても活動している。