ETC2.0で料金割引や渋滞回避が可能に?旧車載器との違いやメリットを徹底解説!

高速道路を利用するとき、「ETC」があればわざわざ料金所で停まって精算する必要もないので大変便利です。

そんなETCですが、現在の利用率は90%を超えており、新車へ標準装備されているのが当たり前の時代となりました。

さらに最近では、ETC2.0という次世代機が普及しはじめており、名前だけはよく耳にするもののまだ認知度は低く、「従来のETCと何が違うの?」「ETC2.0に替えるメリットは?」と感じる人も多いのではないかと思います。

そこで、この記事ではETC2.0の特徴について徹底解説していきます。

社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!

従来のETCとETC2.0の基本的な仕組み

そもそもETCは、1993年に建設省(当時)が策定した「道路技術五箇年計画」において、次世代の道路交通システムのテーマのひとつとして位置付けられたことから開発がはじまりました。

その後、1997年〜2001年の試行期間を経て、2001年3月より本格運用が開始。

それから20年以上が経ち、ETCの1日あたり利用台数は865万台、利用率は95.1%(2024年11月調査)に達しています。

さらに、従来より進化した「ETC2.0」が2016年4月より本格導入されており、こちらの1日あたり利用台数は322万台、利用率は35.6%(2024年11月調査)と、国土交通省の推進もあり普及が加速する一方です。

出典:ETC利用案内ETCの利用状況|国土交通省

従来のETCの仕組み

「ETC」とは「Electronic Toll Collection System」の略称です。

その名の通り、高度道路交通システム(ITS)のひとつとして、「人」「道路」「車両」を情報ネットワークにつなぐことにより、交通事故防止や渋滞緩和といった道路交通問題を解決し、安全で快適な交通環境を目指すことを運用目的としています。

これまでは、有人による道路利用料金の精算が主におこなわれていましたが、最新の無線通信技術を用いることによって通行時の自動決済が可能となりました。

これは、近年普及が進む電子決済(キャッシュレス決済)の一種ともいえます。

仕組みとしては、ETCカードを車載器に挿入した車が料金所のETCレーンを通過することで、車両や乗降場所などの利用料金に関わる情報を無線通信により交信し、瞬時に料金の支払いが完了するシステムとなっています。

5.8GHz帯のアクティブ方式DSRC(狭域通信)による無線通信が採用されており、この方式をETC2.0でも踏襲することで、安定した運用がおこなわれています。

参考:[Q]ETC2.0とは何ですか?|JAF クルマ何でも質問箱

ETC2.0の仕組み

ETC2.0の基本的な仕組みや使い方は、従来のETCと同じです。

より高性能化されたETC2.0では、高速道路等に設置した通信アンテナと車載器との間で、さらに高速・大容量の双方向通信が可能となりました。

これまでのETCにもあった料金収受の利便性向上だけでなく、渋滞回避のための交通情報提供や、安全運転支援などの高度なサービスが展開されています。

ETC2.0に替えると何が違う?享受できる多彩なメリットとは

前述した通り、ETC2.0は従来のETCと比較して機能が大幅に向上しています。

ETC2.0には、さまざまな特徴とメリットがあるので紹介します。

高速料金の割引

2016年4月に開始された、新たな首都圏高速道路料金への変更に合わせ導入された割引制度で、圏央道(茅ヶ崎JCT~海老名JCT、海老名~木更津JCT)、新湘南バイパス(藤沢~茅ヶ崎JCT)をETC2.0車載器で走行した場合に、従来のETC料金から約2割ほど値引きされます。

東名高速道路~関越自動車道からの迂回利用時にも割引が適用されるので、渋滞防止策としても期待されています。

出典:ETC 2.0割引 | ドラぷら(NEXCO東日本)

高速道路からの一時退出

高速道路における休憩施設不足の解消に向けた社会実験として、ETC2.0を搭載している車が高速道路に隣接する道の駅に一時退出しても、追加料金なしで高速道路を再利用できる制度です(記事公開時点、全国27箇所で実施中)。

ただし、利用のための条件として、

  1. 全行程で同一のETCカードを利用する。
  2. 対象のインターチェンジもしくはスマートインターチェンジでの乗り直しで順方向のみの利用とする。
  3. 対象の道の駅に必ず立ち寄る。(出入り口付近のETC2.0アンテナの下を通過する)
  4. 対象のインターチェンジもしくはスマートインターチェンジ退出後、2時間以内に同一インターチェンジから再流入すること。

以上の条件をすべて満たさなくてはいけません。

出典:一時退出・再進入:使える・広がるETC│ETC総合情報ポータルサイト

車両運行管理支援サービス

このサービスは、運行管理の効率化やドライバーの安全確保等を目的として、ETC2.0を搭載した特定車両の走行位置や急ブレーキ等のデータ(特定プローブデータ)を抽出し、配信事業者に提供します。

配信事業者は、提供された特定プローブデータの加工や表示をおこなうサービス事業者に配信し、物流事業者等の車両運行管理に活用することができます。

国土交通省によるトラック輸送状況の実態調査(2015年)によると、約半数で1時間以上の荷待ち時間が発生している結果が出ました。

このサービスによって正確な到着時刻を予測することが可能となり、荷待ち時間の短縮や、運転の危険箇所をピンポイントで特定することによるドライバーの安全確保が期待できます。

出典:ETC2.0車両運行管理支援サービスについて|国土交通省

多彩な情報提供

ETC2.0では、従来のVICS(道路交通情報)と比べて、より詳細な情報を送受信できるようになりました。

これによって、最大1,000km圏内の道路交通情報を取得、ITSスポットと通信し、リアルタイムな渋滞状況を考慮した最適な迂回ルートの提案が可能となったり、見通しの悪いカーブや合流地点での危険情報の通知、逆走警告や落下物情報の提供など、多彩な情報サービスが展開されています。

これらは、ETC車載器からの音声案内をはじめ、ETC2.0対応のカーナビや車載器に適合したスマートフォンと連動させることで、事故情報や気象情報など細かくリアルタイムな交通情報を警告表示することができます。

従来のETCとのサービス比較

従来のETCとETC2.0の比較は以下の表の通りです。

ETCETC2.0
料金収受
料金割引一部対応割引拡充
渋滞情報簡易表示広域&詳細情報
ルート案内×リアルタイム最適ルート
安全運転支援×逆走・事故情報提供
一時退出×対応エリアあり

業務支援用ETC2.0車載器を活用した制度

一般的には知られていませんが、実は「ETC2.0車載器」には、「一般用」と「業務用」が存在します。

業務用は、「業務支援用ETC2.0車載器」と呼ばれており、一般的なETC2.0の機能に加え、業務支援用ETC2.0ならではの制度や特徴があるので、解説していきます。

国際海上コンテナ(40ft背高) 特殊車両通行許可不要区間

これは、一定の条件を満たす国際海上コンテナ車(40ft)について、道路管理者が道路構造等の観点から支障がないと認めて指定した区間に限定して、道路を通行する車両の制限を引き上げることにより、特殊車両通行許可を不要とする制度です。

これにより、長さの一般的制限値が最大16.5m、総重量の一般的制限値が車両の軸数及び軸距に応じて最大44t、軸重の一般的制限値が車両の総重量及び軸数に応じて最大11.5t(輪荷重の一般的制限値は最大5.75t)となります。

また、通行するための要件は以下の通りです。

  1. 国際海上コンテナを運搬するものであることを証明する書類の携行
  2. ETC2.0車載器の搭載及び登録

この制度は、2019年7月31日から運用開始されています。

出典:国際海上コンテナ車(40ft背高)特殊車両通行許可不要区間について(概要)|国土交通省

特車ゴールド制度

「特殊車両通行許可制度」において、2016年1月25日から開始された制度で、正式名称は「ETC2.0装着車への特殊車両通行許可簡素化制度」、通称「特車ゴールド制度」と言います。

セミトレーラーなどの特殊車両が道路を通行するためには「通行許可」を受けなければならず、もしルートを変更したり増やしたりする場合にはその都度ルートごとの更新手続きが必要でした。

この特車ゴールド制度を利用することで、出発地と目的地が同じ場合に、大型車誘導区間で迂回経路の申請が不要となり、複数の経路をひとつにまとめて申請することが可能です。

メリットとしては、渋滞や事故、災害等による通行障害の発生時に申請ルート以外の迂回経路を選択することができ、柔軟な輸送の効率化が期待できます。

また、更新時の手続きも従来と比べて簡素化され、電子メールの指示に従ってワンクリックで更新申請が可能です。※寸法・重量や申請経路の不備などが確認された場合、ワンクリック申請ができないことがあります。

条件として、特殊車両に業務支援用ETC2.0車載器(特殊用途用GPS付き発話型車載器)を装備することや、利用規約等への事前同意、車両情報や車載器に関する情報を登録することで利用可能となる制度です。

出典:特車ゴールド制度概要|国土交通省

特殊車両通行確認制度

「特殊車両通行確認制度」は「特車ゴールド制度」同様、基準に適合した業務支援用ETC2.0車載器を搭載している車両において利用できるサービスです。

従来の特殊車両通行許可制度にある「申請→審査→許可」の手続きを経ず、システムにより申請者が事前に登録した車両について通行可能経路の確認をおこない、道路情報が電子化された道路を対象にオンラインで即時通行可能となる制度です。

この制度の特徴としては、手続きが「早い・簡単・便利」なところと言えます。通行可能経路の検索・確認だけでなく、特殊車両の登録・届出・廃止の手続きも24時間・オンラインでおこなうことができます。

特殊車両通行許可制度と特殊車両通行確認制度の比較は以下の通りです。

特殊車両通行許可制度特殊車両通行確認制度(新制度)
車両登録車両登録不要※許可証の有効期間内は通行可能車両の事前登録が必要※5年ごとに車両登録を更新
手続き~運行数日~数カ月要即時通行
経路(手続き時)手作業で通行経路を選択※通行が難しい道路、通行できない道路を選ぶことがあるシステムで通行可能経路を自動表示、目的地の追加が可能
対象道路全ての道路が対象となるが、電子データ化されていない道路は長期間の個別協議が発生する道路情報が電子データ化された道路が対象、システムで通行可能経路を即時表示
経路(通行時)通行できる道路の区間を一覧表、経路図で表示通行できる道路の区間を経路図で表示
支払い請求書を受取り、銀行振込等による支払いオンラインでキャッシュレス決済
携行書類許可証および関係書類一式を携行(電子データ可)回答書を携行(電子データ可)
入力申請の都度、車両諸元等の情報を入力車両登録の情報を用いるため、車検証情報から一部入力

出典:特車登録センター|一般財団法人 道路新産業開発機構(HIDO) 

まとめ:ETC2.0のメリットを理解した上で導入を検討してみよう

本記事では、ETC2.0の特徴やメリットについて徹底解説しました。

従来のETCと比べて、料金割引や高速道路からの一時退出などの恩恵が受けられるようになったETC2.0ですが、その利便性に加えて、交通情報、事故情報、気象情報など安全運転に役立つ情報もより広域で詳細なものを享受できるようになりました。

渋滞回避や休憩所の確保にも活用できる上、特に業務支援用ETC2.0を活用した特殊車両の制度が非常に手厚くなっているなど、仕事で車を運転する人にとって有用なことがわかります。

ETC2.0を導入することは、日々の業務効率化やドライバーのストレス軽減にも役立ち、ひいては交通環境の改善や事故防止にもつながるマストツールとなっています。

一部の旧車載器では、セキュリティ面の脆弱性によりサイバー攻撃などの脅威に晒される可能性が問題視されており、2030年までを目安としたETC2.0への移行が推奨されているので、社用車に取り付けられている車載器の型式登録番号をチェックするなど、この機会にETC2.0の導入を検討してみてもよいでしょう。

JAF交通安全トレーニングでは、高速道路の安全運転に関する講座など、多数の教材を用意しています。

毎月e-ラーニング形式でコンテンツを配信しているので、JAFならではの実践的な視点の教材で業務中の交通事故を防止し、ドライバーがより働きやすい環境づくりに貢献します。

社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!

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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。