運転中に眠気に襲われ、意識が朦朧としたまま運転を続けてしまう「居眠り運転」は、重大な交通事故を引き起こしかねない危険な行為です。
居眠り運転による事故の場合、ブレーキやハンドル操作による危険回避行動を取らないケースが多いので、死亡事故や重傷事故につながりやすいという特徴があります。
本記事では、居眠り運転の罰則や違反点数、過労運転との違い、事故発生時の対応、そして企業が負うことになる責任について詳しく解説します。
年齢別に見る事故傾向とその対策を解説します!
目次
発生数は少なくも死傷事故に繋がりやすい「居眠り運転」

日本自動車研究所が交通事故分析センターの統計を元に分析した研究結果によると、2019年に起きた交通事故全体に占める居眠り運転の割合は、0.4%と算出されました。
全体数に対する発生割合こそ少ないものの、居眠り運転による事故はそれ以外の事故に比べ、死亡重傷事故の割合が7.8%から27.2%にまで増加することがわかっていて、被害が甚大になりやすい傾向にあります。
その理由のひとつに、運転者が眠ってしまうことで本来可能なはずだった、危険を察知してからブレーキをかけたり、ハンドルを切って回避するといったとっさの安全行動が取れなくなることが挙げられます。
つまり対向車線へのはみ出しによる正面衝突、高速での追突事故、歩行者への衝突など、深刻な結果を招きやすくなるのです。
また、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」では、「睡眠時間が6時間未満の人は、7時間の人と比べて居眠り運転の頻度が高い」「交通事故を起こした人で、夜間の睡眠時間が6時間未満の場合、追突事故や自損事故の頻度が高い」ことが国内外の研究結果として示されています。
居眠り運転は、睡眠不足や疲労の蓄積が主な原因として挙げられますが、その他にも薬の副作用、食後の眠気、高速道路での単調な運転による感覚の鈍麻なども大きな要因となります。
17時間起き続けた時の眠気は、ビール約500mlの飲酒時と同等の作業能力低下をもたらすとされる研究データもあります。
ドライバーは、これらのリスクを十分に理解し、眠気を感じたら無理に運転を続けず、休憩を取ることが重要です。
参考:健康づくりのための睡眠指針2014|厚生労働省
参考:高速道路での居眠り運転防止に向けた効果的な対策に関する調査研究効果的な対策に関する調査研究|高速道路調査会
道路交通法上、居眠り運転は「安全運転義務違反」に該当

もし居眠り運転を理由に検挙されたらどうなるのか、気になる方も多いと思います。
実は、道路交通法には「居眠り運転」という行為に対して明確な違反項目は存在しません。
しかし、道路交通法第70条では以下のように規定されており、居眠り運転はこの安全運転義務に違反する行為とみなされる可能性があります。
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
居眠り運転は実証が難しい
事故を起こした衝撃で運転者の意識は覚醒することが多いため、運転者自身が「居眠りをしていた」と申告しない限り、居眠り運転を実証することは困難を極めます。
とは言え、「よそ見をしていた」と証言すれば、前方不注意として安全運転義務違反となる可能性が高く、書類上、前方不注視や漫然運転として処理されるケースも少なくありません。
一方で、ブレーキ痕などの事故状況から明らかに居眠りが疑われる場合や、ドライブレコーダーの映像、目撃者の証言、事故前後の勤務状況などから総合的に判断されることもあります。
特に、長時間労働が記録されている場合や薬の服用が確認された場合などは、安全運転義務違反ではなく過労運転違反として立件される可能性もあります。
過労や病気、薬の服用が影響している場合は「過労運転」と判断されることも
道路交通法第66条には以下のように記されており、居眠りの原因が「正常な運転ができないおそれ」に該当する場合などには、安全義務違反よりも重い「過労運転」と判断される可能性があります。
過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
過労運転と判断される具体的な状況としては、長時間労働による極度の疲労状態、睡眠不足が慢性化している状態、病気による運転能力の低下、薬(風邪薬や花粉症の薬などを含む)の副作用による眠気などが挙げられます。
居眠り運転の罰則と違反点数

先述したように、居眠り運転は安全運転義務違反に該当する可能性があります。
安全運転義務違反で検挙された場合、以下のような罰則があります。
| 車両種別 | 違反点数 | 罰金 |
|---|---|---|
| 大型自動車 | 2点 | 12,000円 |
| 普通自動車 | 9,000円 | |
| 二輪車 | 7,000円 | |
| 小型特殊自動車 | 6,000円 | |
| 原動機付自転車 |
なお、反則金を納めない場合は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金の刑事罰が科されます。
過労運転と判断された場合
過労運転と判断された場合の罰則は安全運転義務違反と比べて格段に重く、違反点数25点が加算され、前歴がなくても即座に免許取り消しとなります。
欠格期間は2年間で、その間は運転免許を取得することができません。
また、刑事罰として3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます。
過労運転には交通反則通告制度が適用されないため、反則金を納めて刑事手続きを免れることはできません。
過労運転は事故の有無に関わらず、過労状態で運転しただけで処罰の対象となる点に注意が必要です。
物損事故を起こした場合
居眠り運転によって物損事故を起こした場合、軽微な事故であれば安全運転義務違反として処理され、違反点数2点と車両別で反則金が科される可能性があります。
ただし、事故の原因や状況によっては、軽微な物損事故であっても過労運転と判定され、より重い罰則が科されることがあります。
また、道路構造物や民家の壁を破壊したり、通行人の所有物を損壊するなど損害を出せば、民事上の賠償責任が発生します。
人身事故を起こした場合
居眠り運転により人身事故を起こした場合、罰則はさらに重くなり、事故の原因が故意か過失かによって適用される法律が異なります。
| 概要 | 違反点数 | 刑事罰 | |
|---|---|---|---|
| 過失運転致死傷罪 | 睡眠不足や過労によってうっかり居眠りをしてしまい、人を死傷させた場合に適用 | 基礎点数:2点+付加点数:3点〜20点 | 7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪 | アルコールや薬物の影響によって居眠り運転をしてしまい、人を死傷させた場合に適用 | 基礎点数:45点~62点+付加点数:2点~20点 ※危険運転致死の場合は基礎点数+付加点数という計算方法ではなく、危険運転致死=62点 | 負傷:12年以下の拘禁刑死亡:15年以下の拘禁刑 |
参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|e-Gov法令検索
参考:交通事故の付加点数|警視庁
参考:行政処分と点数制度|愛知県警察
居眠り運転で事故を起こしたときに取るべき対応

居眠り運転で事故を起こした場合に適切な対応を怠ってしまうと、さらに重い罰則が科される可能性があるため、まずは冷静になり、以下のような対応を取るようにしましょう。
周囲の安全を確保し、状況を把握する
事故を起こしたら直ちに車両を停止させ、可能であれば路肩に車を寄せ、ハザードランプを点灯させましょう。
二次被害を防ぐため、三角表示板や発煙筒を設置して後続車に注意を促すことが重要です。特に高速道路や交通量の多い道路では、二次事故の危険性が高いため、速やかに安全措置を講じる必要があります。
この対応を怠ってしまった場合、危険防止等措置義務違反による罰則として「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」が科される可能性があるのです。
怪我人がいるときは直ちに救護する
負傷者がいる場合は、直ちに救護活動を行う必要があります。
負傷者を安全な場所に移動させ、必要に応じて救急車を呼びましょう。
応急手当ができる場合は適切な処置を施すのが理想的ですが、重傷者を不用意に動かすと症状が悪化する可能性があるため、専門家の到着を待つことも大切です。
救護義務を怠ってしまうと、救護義務違反(ひき逃げ)として10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、違反点数35点が加算され、即座に免許取り消しとなります。
速やかに警察に通報する
事故を起こした際の警察への通報は道路交通法上の義務であり、物損事故であっても人身事故であっても、必ず警察に連絡しなければなりません。
警察への通報を怠ると、報告義務違反として3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科されます。
また、保険金の請求に必要な交通事故証明書が発行されないため、被害者への賠償手続きにも支障が生じてしまいます。
警察が到着したら事故の状況を正直に説明し、警察の指示に従うことが重要です。
相手がいる事故の場合は、相手の連絡先や加入している保険会社の情報も交換しておきましょう。
従業員の居眠り運転によって発生する企業の責任

従業員が業務中に居眠り運転で事故を起こした場合、運転者本人だけでなく、企業にも責任が及ぶ可能性があります。
使用者責任
使用者責任とは、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、雇用主である企業が損害賠償責任を負うというものです。
従業員が業務中に居眠り運転で交通事故を起こし、第三者に損害を与えた場合、会社側に直接の過失がなくても、被害者に対する損害賠償責任を負います。
具体的には営業活動中の移動や取引先への訪問、物品の配送など、業務に関連する運転中に事故が発生した場合が該当します。
また、トラック、バス、ハイヤー・タクシーなどの自動車運転者については、改善基準告示により1日の拘束時間は原則13時間以内、連続運転は4時間以内などの基準が定められています。
参考:民法第715条|e-Gov法令検索
参考:トラック運転者の改善基準告示|厚生労働省
運行供用者責任
運行供用者責任とは、自動車損害賠償保障法第3条に基づいて、自動車を所有し業務のために運行させている者が負うことになる賠償責任です。
企業が所有する社用車やリース車両を、従業員が業務で使用する場合、企業は運行供用者としてその運行に責任を負います。
従業員の私有車であっても、会社の業務のために使用している場合には、企業が運行供用者とみなされることもあるので注意が必要です。
運行供用者責任は使用者責任よりも広範囲に適用され、免責されるハードルが非常に高いため、業務中の居眠り運転による事故の場合、企業が責任を免れることは極めて困難と言えるでしょう。
従業員の居眠り運転を未然に防ぐために企業が講じるべき対策については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、合わせてご覧ください。
まとめ|居眠り運転の罰則は事故の状況によって重くなる可能性も
居眠り運転は安全運転義務違反に該当し、違反点数2点、反則金6,000円~12,000円が科されます。
しかし、人身事故を起こした場合や過労運転と判断された場合には、罰則が大幅に重くなり、社会的な影響も甚大なものになります。
居眠り運転を防ぐためには、十分な睡眠時間の確保、適切な休憩の取得、長時間運転の回避、薬の副作用への注意などが重要です。
眠気を少しでも感じたら、無理をせず安全な場所で休憩を取る判断ができるかどうかが、自分自身と他者の命を守ることにつながります。
しかし、業務やノルマに追われているドライバーはなかなかその判断ができないもの。
どうすればドライバーに安全な判断を取ってもらえるようになるか、日々頭を悩ませている管理者の方は、JAF交通安全トレーニングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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