「アルコールチェックの記録簿には何を書いたらいいか知りたい」
「アルコールチェック記録簿の運用方法を知りたい」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
本記事では、アルコールチェックの記録簿に記載するべき内容や保管方法、導入時にやるべきことについて解説します。
記事を読むことで、抜けや漏れなくアルコールチェックの記録簿を運用できますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
アルコールチェックは義務化されている
2022年4月より、安全運転管理者を選任しているすべての企業に対してアルコールチェックが義務化されました。
アルコールチェック義務化の背景には、2021年6月に発生したトラックによる飲酒運転事故があります。
同事故において、運転者は飲酒運転により児童5人を撥ねてしまったのですが、その際運転していたのが当時アルコールチェックが必要なかった白ナンバーのトラックでした。
以上がニュースで報道されると、飲酒運転事故の危険性が以前にも増して問題視されることとなりました。
その結果、2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、白ナンバーの車に対してもアルコールチェックが義務化されることになったのです。
アルコールチェックの実施が義務となる企業
アルコールチェックの実施が義務となるのは以下のいずれかの条件を満たす場合です。
- 定員11人以上の車を1台以上使用している
- 白ナンバー車を5台以上使用している
出典:e-Gov法令検索「道路交通法第七十四条の三」
以上に該当する企業は、道路交通法の定めにより「安全運転管理者」を選ばなければならず、安全運転管理者はアルコールチェックの実施が義務となります(道路交通法施行規則第九条の十)。
また、アルコールチェックの実施が義務となる条件には車種や使用用途は問われていないため、業務のために使用している車がすべて軽自動車(黄色ナンバー)であっても対象に含まれます。
アルコールチェックの基本的な流れ
アルコールチェックの基本的な流れは次の通りです。
- 業務開始時に安全運転管理者が目視にて運転者の状況(顔色、匂いなど)を確認する
- 運転者が検知器を用いてアルコールチェックを実施する
- 運転者がチェックの結果を記録簿に記入する
- 業務終了後、安全運転管理者が運転者の状況を確認する
- アルコールチェックを実施する
- 運転者がチェックの結果を記録簿に記入する
- 安全運転管理者に記録簿を提出する(紙による記録の場合)
- 安全運転管理者が記録簿の内容を確認し必要に応じて修正を依頼する
- 記録簿を1年間保管する
実施するタイミングは業務開始前後の2回で、車を乗り降りする度にアルコールチェックをする必要はありません。
また、原則として安全運転管理者の立会いのもと実施しなければなりません。
そのため、直行直帰や出張など、対面での実施が難しい場合であってもスマートフォンやカメラなどを用いて、目視できる状態を整えた上で実施する必要があります。
アルコールチェック記録簿に記載しなければならない内容
アルコールチェックを記録する際は、以下の内容を必ず記載する必要があります。
- 確認者名
- 運転者名
- 運転者の業務に係る自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
- 確認の日時
- 確認の方法
・アルコール検知器の使用の有無
・対面でない場合は具体的方法(カメラ・スマートフォンなど)も記載 - 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
出典:警視庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)」
記録簿の様式は特に定められていないため、どのような形式で作成しても問題ありませんが、以上の内容だけは抜け漏れがないようにしましょう。
アルコールチェック記録簿の運用方法
アルコールチェックの記録簿を運用する主な方法には「紙による保存」「データによる保存」の2つがあります。
紙による運用
1つ目は紙による運用の方法です。
紙によって記録簿を保管するメリットは、特別な用意がなくとも簡単に開始できる点で、ExcelやGoogleスプレッドシートでフォーマットを作成すればすぐに運用できます。
また、コストがあまりかからない点もメリットで、基本的には印刷にかかるコストだけで運用可能です。
一方で、記録簿を保管するスペースを用意しなければならないデメリットもあります。
企業の規模にもよりますが、すべての記録簿を1年間保管しなければならないとなると、記録簿の枚数は相当数にのぼります。
そのため、場合によっては事務所内ではスペースが足りず、新たに倉庫などを用意する必要があるでしょう。
データによる運用
2つ目はデータによる運用です。
近年では、アルコールチェックを実施するためのITツールが多く提供されており、導入することで以下のようなことが可能になります。
- 測定結果の自動入力
- クラウド上でのデータ保存
- 規定以上のアルコール検出時の通知
データによる運用のメリットは管理にかける手間を減らせる点です。
アルコールチェックツールに搭載されている自動入力機能や通知機能を活用すれば、運転者の手間を削減したり、人的ミスによる飲酒運転を防いだりできます。
また、記録簿はデータで保管されるため、紙のような保管スペースを用意する必要がない点もメリットといえるでしょう。
一方、デメリットとしてはコストが発生する点があります。
ツールにもよりますが、初期費用にくわえ月額利用料なども発生するため、紙による運用とくらべると多くの費用が必要になります。
活用したいアルコールチェック記録簿のテンプレート
国土交通省や各都道府県にある安全運転管理者協会では、アルコールチェック記録簿のテンプレートが提供されています。
提供元 | 特徴 |
---|---|
国土交通省 | 基本となる記録簿 |
島根県安全運転管理者協会 | 少ない枚数で管理ができる |
鹿児島県安全運転管理協議会 | 日付による管理がしやすい |
千葉県安全運転管理協会 | 車両ごとの管理がしやすい |
どのような記録簿にすれば良いかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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アルコールチェックを実施する者
アルコールチェックの実施は、安全運転管理者の業務です。
したがって基本的には、安全運転管理者が運転者の状態確認をおこないますが、安全運転管理者が不在の場合などには「副安全運転管理者」や「安全管理者の業務を補助する者」が代行することも可能です。
安全運転管理者
安全運転管理者の業務は以下の通りです。
- 運転者の状況把握
- 安全運転確保のための運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交替要員の配置
- 異常気象時等の安全確保の措置
- 点呼等による安全運転の指示
- 運転日誌の備付けと記録管理
- 運転者に対する安全運転指導
- 酒気帯びの有無の確認及び記録の保存、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること
- アルコール検知器の使用等
出典:e-Gov法令検索「道路交通法施行規則第九条の十」
また、安全運転管理者になるためには、年齢や過去2年以内に酒酔い運転や無免許運転などの違反行為がない、などの要件を満たす必要があります。
副安全運転管理者
副安全運転管理者とは、安全運転管理者の業務をサポートする役割です。
乗車定員数にかかわらず「20台以上」の自動車を保有している企業は、20台ごとに1名の副安全運転管理者を、選任しなければなりません。
副安全運転管理者を選任するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 20歳以上
- 1年以上の運転管理の実務経験あるいは3年以上の運転経験がある者、自動車運転管理に関してこれらの者と同等以上の能力があると公安委員会が認定した者のいずれか
- 過去2年以内に、無免許運転や酒気帯び運転、ひき逃げ運転などの違反履歴がない人
- 公安委員会の解任命令を受けた人で、解任の日から2年以上が経過している人
また、業務内容が業務のサポートとなっていますが、具体的な内容としては安全運転管理者がおこなうものとほとんど同じです。
安全運転管理者を補助する者
「安全運転管理者の業務を補助する者」とは、名前の通り安全運転管理者をサポートするものを指します。
安全運転管理者を補助する者となるための要件は特にありませんが、形骸化を防ぐためにもしっかりと教育をおこなった上で選任することが重要です。
安全運転管理者を補助する者の選任により、「特定の従業員にアルコールチェックの負担が集中する」といった事態が防げるので、企業は無理なくすべての従業員にチェックを実施できます。
アルコールチェック記録簿の保存を怠った場合はどうなる?
アルコールチェック記録簿の保存を怠った場合はどうなるのかについて解説します。
安全運転管理者義務違反となる
アルコールチェック記録簿を保存していなかった場合、安全運転管理者の義務違反となります。
場合によっては公安委員会によって安全運転管理者を解任される可能性があります。
従業員の飲酒運転リスクが高まる
アルコールチェック記録簿を保存しない場合、飲酒運転のリスクが高まる可能性があります。
適切に記録・保存すれば、従業員それぞれの飲酒に関する特徴やこれまでの指導内容を把握でき、今後の管理に活かせます。
しかし適切に記録・保存できていない場合は、これらの特徴や指導内容を把握できず、効果的な管理が難しくなるでしょう。
その結果、運転者が業務中に酒気帯びや酒酔い状態で事故をおこしてしまった場合、運転者だけでなく車両の提供者や同乗者なども以下のように罰せられます。
運転者 | 酒気帯び運転(呼気1L中のアルコール濃度0.15mg以上) | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
運転者 | 酒酔い運転(まっすぐに歩けないなど客観的に見て酔っている状態) | 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 |
車両の提供者 | 酒気帯び運転 | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
車両の提供者 | 酒酔い運転 | 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 酒気帯び運転 | 2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 酒酔い運転 | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
出典:e-Gov法令検索「道路交通法第百十七条」
また、適切な記録と保存により、誰にどのような指導が必要なのかを客観的に評価できます。
従業員への適切な教育・指導をおこない飲酒運転防止に努めましょう。
アルコールチェック導入に向けて企業がやるべきこと
アルコールチェック導入に向けて企業がやるべきことについて解説します。
運用体制の構築
はじめにアルコールチェックの運用体制を現場での運用レベルまで構築します。
構築すべき主な内容は次の通りです。
アルコールチェック実施方法 | ・基本的な実施方法 ・直行直帰など非対面時における実施方法 |
使用機器 | ・どのアルコール検知器を使用するのか ・非対面時における連絡にはどの機器(スマートフォン、カメラなど)を使用するのか |
記録簿 | ・どの媒体でおこなうのか(紙・ITツールなど) ・紙で運用する場合の提出方法や保管場所 |
運用体制を構築する際のポイントは、管理者・実施者双方にとってなるべくシンプルにおこなえるようにすることです。
アルコールチェックの手順や管理があまりに複雑であった場合、チェック作業が形骸化してしまい、結果として飲酒運転が発生する事態にもなりかねません。
以上のような事態を防ぐためにも、できるだけシンプルにおこなえる運用体制を構築し、もしどうしても複雑化してしまうようであれば、ITツールの利用なども検討しましょう。
アルコールチェックに必要な備品の購入
次に、構築した運用体制の実施に必要な備品を購入します。
備品が不足していると、アルコールチェックがスムーズにおこなえなくなるだけでなく、未実施での業務にもつながりますので、不測の事態にならないように準備しましょう。
また、アルコール検知器をはじめとしたいくつかの機器には、経年劣化によって機能や精度が低下するものもありますので、定期的にメンテナンスができる数を揃えることも重要です。
従業員への周知および教育
最後は、従業員への周知および教育の実施です。
運用体制をいくらしっかりと構築できていたとしても、運転者側が「少しぐらい飲んでも大丈夫」「ばれなければ問題無い」という意識では、いずれ飲酒運転が発生します。
そのため、定期的に「飲酒運転をするとどうなるのか」「周囲にどのような影響を与えるのか」など安全運転に関する教育をおこないましょう。
人員不足や各従業員の就業時間が異なるなどの理由で、教育が難しい場合はeラーニングを利用した安全運転教育も効果的です。
JAFメディアワークスでは、JAFが長年培った交通安全に関するノウハウをまとめたeラーニング教材「JAF交通安全トレーニング」を提供しています。
スマートフォンやタブレットでの学習もできるため、勤務時間がバラバラの従業員に対しても均一の教育を実施できる点が特徴です。
スマホやタブレットでの受講も可能
まとめ:アルコールチェックの記載内容を把握して記録簿を適切に運用しよう
アルコールチェックを実施する際は、記録をとった上で1年間保管することが義務付けられています。
また、記載しなければならない項目も定められており、適切に保管できていなかったり、抜け漏れがあったりした場合は、安全運転管理者義務違反となります。
公安委員会によって解任される場合もありますので、しっかりと記載内容を把握して適切に記録簿を運用しましょう。
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