業務中の事故やトラブルを防ぐためにも、社用車の点検は欠かせない取り組みです。
実際、社用車の点検は所有者の義務とされており、企業には確実な実施が求められます。
点検にはいくつか種類があり、実施する頻度も異なるため、点検整備をおこなう際は、法規制に沿って適切に実施しなければなりません。
本記事では、社用車の点検義務について解説します。
点検の種類や実施する頻度、実施するポイントなどについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
社用車点検の目的と重要性
まずは、社用車を点検する目的や重要性についてあらためて確認しましょう。
そもそも、自動車は使用する度に消耗し、徐々に性能が低下するリスクがあります。
万が一、業務中に不具合が生じれば、従業員が交通事故を起こす事態になりかねません。
事故が起きれば従業員の人命が脅かされ、事業に深刻な影響を与える可能性があります。
かけがえのない人材を守るためにも、社用車の点検は重要な取り組みです。
社用車の点検に関する法規制を把握し、確実に実施しましょう。
社用車の点検義務とは?
点検業務は、車の所有者や運転する者すべてに課せられています。
もし点検義務を怠れば、相応の罰則が発生する点には注意しましょう。
本章では社用車の点検義務の法的根拠や、違反時の罰則について解説します。
社用車の点検は使用者の義務
道路運送車両法では、自動車の点検について以下のように定めています。
自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。
引用:道路運送車両法第四十七条
以上でわかるように、社用車の点検は使用する企業の義務です。
そのため、企業は社用車を適切な状態に維持できるよう努めなければなりません。
点検義務を怠った場合
点検義務を怠ると、罰則が課せられる可能性があります。
事業用車(バス・トラック・タクシーなど)の場合、法定点検の未実施に対し、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。(道路運送車両法第百七条)
日常点検整備には、未実施に対する罰則が制定されていません。
ただし、日常点検の不備により業務中に事故を起こした際などは、罰金や違反点数が課せられます。
なお、点検義務の違反において、企業が注意すべきは罰則だけではありません。
もし、不具合がある社用車で事故を起こせば、交通安全を遵守するための義務を怠っていたとして社会的な非難を受けるでしょう。
そのような状況になれば、企業の社会的な信頼は失墜し、事業の存続すら危ぶまれる事態になります。
企業が安定的に経営を継続するためにも、点検義務は必ず果たさなければなりません。
社用車点検の種類
点検整備には、大きく分けて3種類あります。
それぞれ内容が異なるため、正確に把握しましょう。
日常点検整備
日常点検整備とは、社用車の所有者や、運転者自身でおこなう点検です。
日常点検整備は、エンジンルーム・車周り・運転席の3つの観点から、自動車が安全に使用できるかを確認する作業です。
この際、液状消耗品・ゴム状消耗品の状態や、エンジンやライトなどの稼働状況などをチェックします。
他の点検整備と違い、日常点検整備は自動車のプロでなくても、比較的容易に実施できるものが中心です。
もし、点検の過程で社用車に問題が発見された場合は、整備業者に対応を依頼しましょう。
定期点検整備
定期点検整備とは、一般的な構造・装置の自動車に関して標準的な使用を前提として、定期的に行う必要のある点検のことです。
法定点検とも呼ばれており、以下のように道路運送車両法で実施が義務付けられています。
自動車の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。
参照:道路運送車両法第四十八条
定期点検整備は、車種や用途によって実施する頻度や、点検項目の内容が異なります。
また、タクシーやバスなどのような事業用車の場合、定期点検整備の未実施は罰則の対象になるので注意しましょう。
車検
車検は「自動車検査登録制度」の略称です。
自動車が道路運送車両の保安基準を満たした状態であるかを確認し、検査標章の更新をおこないます。
定期的におこなう点から、車検は定期点検整備と混同されやすいですが、実際は明確な違いがあります。
車検はあくまで自動車が保安基準と適合しているかを確認するためのもので、車検を受けていないと公道を走行できません
対して定期点検整備は、自家用車を正常な状態に保ち、事故を未然に防ぐことを目的としています。
社用車を点検する頻度
社用車の点検は、実施する内容や車種によって頻度が異なります。
本章では、日常点検整備・定期点検整備それぞれの実施頻度について解説するので、実践する際の参考にしてください。
日常点検整備の頻度
日常点検整備の頻度に、法的な定めはありません。
しかし、運転中のトラブルを防止するためにも、日常点検整備はなるべく実施しましょう。
毎日の日常点検整備が難しかったり、社用車の利用頻度が少なかったりする場合でも、高速道路利用前や洗車時、悪路が想定される際など、タイミングを決めておくとよいでしょう。
ただし、タクシーやトラックのような事業用車を使用する企業は、1日1回は運行前に日常点検整備を実施しなければなりません。
定期点検整備の頻度
定期点検整備は、車種や用途ごとに実施する頻度が定められています。
加えて、定期点検整備は車種ごとに項目が異なる2種類の点検があり、それぞれ実施時期が違う点には注意しなければなりません。
車種や用途ごとの実施頻度は、以下のとおりです。
自家用車・軽自動車 | 1年ごと(29項目) 2年ごと(60項目) |
中小型トラック(自家用) レンタカー(乗用車) | 6ヶ月ごと(24項目)12ヶ月ごと(86項目) |
バス・トラック・タクシー(事業用) 大型トラック(自家用) 乗用車以外のレンタカー | 3ヶ月ごと(51項目)12ヶ月ごと(101項目) |
被牽引自動車 | 3ヶ月ごと(23項目)12ヶ月ごと(36項目) |
二輪自動車 | 1年ごと(35項目) 2年ごと(54項目) |
事業用として使われる車種ほど、点検の頻度が高く、項目も多いことがわかります。
社用車の点検を適切に実施するためのポイント
本章では社用車を点検する際に、押さえておくべきポイントについて解説します。
社用車の点検は、従業員の安全を守ったり、企業に降りかかるリスクを回避したりするうえで不可欠な取り組みです。
点検整備がただのパフォーマンスにならないよう、それぞれのポイントを意識しましょう。
従業員に社用車点検の目的と重要性を理解させる
社用車を点検する目的や重要性は、実際に点検を行う者だけでなく、すべての従業員が把握する必要があります。
とりわけ、定期点検整備や車検と違い、運転者や所有者が担う日常点検整備は、従業員の意識によって、点検の精度が左右されます。
たとえ1人でも、従業員が日常点検整備を怠れば、業務中にトラブルに見舞われるリスクが高まるでしょう。
そのため、安全運転管理者を中心に研修を実施するなど、社用車の点検をおこなう目的や重要性を伝える取り組みが必要です。
もし、社用車の点検に関する研修を実施するなら、「JAF交通安全トレーニング」を活用しましょう。
JAF交通安全トレーニングなら、適切な日常点検整備を学ぶための教材があるため、点検の手順を学ぶうえでも役立ちます。
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日常点検整備ではチェックシートを活用する
日常点検整備は、エンジンルーム・車周り・運転席のそれぞれに複数の点検項目が設定されています。
それぞれの主な点検項目は以下のとおりです。
【エンジンルーム】
- ブレーキ液の量
- 冷却水の量
- エンジンオイルの量
- バッテリ液の量
- ウインド・ウォッシャ液の量
【車周り】
- ランプ類の点灯・点滅
- タイヤの亀裂や損傷の有無
- タイヤの空気圧
- タイヤの溝の深さ
【運転席】
- エンジンのかかり具合・異音
- ウインド・ウォッシャ液の噴射状態
- ワイパーの拭き取り能力
- ブレーキの踏み残りしろと効き具合
- 駐車ブレーキの踏みしろ(引きしろ)
- エンジンの低速・加速状態
日常点検整備の項目はいずれも重要なものですが、簡単に記憶できる項目数ではありません。
そのため、実際に日常点検整備をおこなうなら、国土交通省が作成した日常点検項目シートを活用しましょう。
必要な項目が網羅されているうえに、視覚的にわかりやすいため、日常点検整備がスムーズに実行できます。
なお、日常点検項目シートは、国土交通省やJAFのサイトから無料でダウンロードが可能です。
点検の内容と結果を記録・保存する
日常点検整備および定期点検整備を実施したら、内容と結果を記録し、一定期間保存しましょう。
所有する社用車が多い場合、点検時の記録を保存しておけば、点検の結果や部品を交換した時期などを把握しやすくなります。
点検整備記録簿とは、点検の結果や実施した年月日などを記録したものであり、自動車に備え付ける形で保管します。
点検整備記録簿の保管期間は、実施した定期点検整備によって異なります。
3ヶ月・6ヶ月点検の場合は1年間、1年点検の場合は2年間です。
まとめ:義務を怠らず確実に社用車の点検を実施しよう
社用車の点検は、業務中の事故発生を防ぎ、従業員や社会の人々の命を守る上で欠かせない取り組みです。
そのため、法律で実施する内容や頻度が細かく定められています。
社用車の点検を怠ったことで事故が発生すれば、交通安全を遵守するための義務を怠っていたとして、企業の社会的な信用を損なう結果にもつながるでしょう。
そのため、社用車の点検は、車種や用途に合った頻度で確実に実施する必要があります。
点検項目や実施する頻度に注意しながら、適切に対応しましょう。
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