企業の担当者は、日々の業務で従業員の安全確保や環境保全に努めていることでしょう。
忙しい業務の中であっても、車両の点検整備を怠ることがあってはいけません。
車両の不具合は、人命や安全を脅かす事故リスクを高めるばかりか、整備不良で違反となり企業の信頼を損なうリスクもあります。
本記事では、日常点検整備の重要性を改めて認識し、15項目にわたる点検整備のポイントを詳しく解説します。
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日常点検整備でやるべきことや社用車点検の頻度
企業の車両管理担当者にとって、社用車の点検整備は安全運行の基本です。
日常点検整備とは、車両の状態を定期的にチェックして、異常がないか確認することを指します。
主な点検項目としては、タイヤの空気圧、エンジンオイルや冷却水のレベル、ブレーキの効き具合、ライトやウインカーの点灯確認などが挙げられます。
これらの点検を怠ると、重大な故障や事故の原因になり得るため、定期的に実施することが重要です。
点検の頻度については、社用車(自家用自動車)では特段の定めはありません。
運転時の状態や走行距離に合わせて、適切な時期に実施することが推奨されています。
企業によっては専用の点検チェックリストを作成し、担当者が確実に点検を実施する仕組みを整えるのがベストです。
これにより、点検漏れを防ぎ、車両の安全性を高められます。
また、整備工場に依頼する定期点検整備も確実に実施することで、より万全な車両管理が可能です。
定期点検整備は、社用車の長寿命化や運行コストの低減にも寄与し、企業の安全運行を確保するために徹底してください。
日常点検整備15項目
社用車の安全運行を確保するためには、常日頃の日常点検整備が欠かせません。
ここでは、企業の車両管理担当者が抑えておくべき日常点検整備の15項目について解説します。
日常点検整備を定期的に実施することで、車両のトラブルを未然に防ぎ、安全で効率的な運行が可能となります。
特に長距離を走行する車や頻繁に使用する車は消耗が大きいため、こまめなメンテナンスと点検は欠かせません。
事故やトラブルが発生すると修理や対応に追われ、一部の業務がストップしてしまうことも考えられます。
従業員や道路利用者の身を危険にさらすばかりか、業務上の損失もあるでしょう。
日頃から車両の状況を観察することで、不具合を早期発見することが可能です。
1.ブレーキ液の量
ブレーキ液の量は、車両の安全性を確保するための重要な点検項目です。
ブレーキ液はブレーキシステムの圧力を伝える役割を担っており、その量が不足するとブレーキの効きが悪くなり、制動距離が長くなる恐れがあります。
点検方法としては、エンジンルーム内のブレーキ液リザーバータンクを確認し、液面が「UPPER」と「LOWER」の間にあることを確認します。
液面が低い場合は、適切なブレーキ液を補充し、同時に漏れがないかも確認してください。
2.冷却水の量
冷却水は、エンジンの温度を適切に保つために必要不可欠な要素です。
冷却水の量が不足すると、エンジンが過熱し、重大な損傷を引き起こす可能性があります。
点検の際は、ラジエーターのリザーバ・タンクを確認し、液面が「FULL」と「LOW」の間にあるかを確認します。
冷却水が不足している場合は、適切な割合で希釈された冷却水を補充してください。
また、冷却系統に漏れがないか、ホースや接続部もあわせて点検することが重要です。
3.エンジン・オイルの量
エンジン・オイルの量は、エンジンの潤滑や冷却、清浄作用を維持するために不可欠です。
オイル量が不足すると、エンジンが適切に作動せず、重大な損傷を引き起こすことがあります。
点検方法は、エンジンを停止してオイルレベルゲージを引き抜き、付着しているオイルを拭き取ります。
その後ゲージを再度差し込み、再び引き抜いてオイル液面が「L」と「R」の間にあることを確認してください。
オイル量が不足している場合は、指定されたオイルを適量補充します。
ただし、エンジンオイルは不足や異常がなくても、適切な時期に交換しましょう。
4.バッテリ液の量
バッテリ液の量は、エンジンの始動や車両の電気系統が正常に機能するために重要です。
バッテリ液が不足すると、バッテリの性能が低下し、最悪の場合、エンジンの始動ができなくなるほか、バッテリーが爆発する危険もあります。
点検方法としては、車を揺らすなどしてバッテリの液量が「UPPER」と「LOWER」の間にあるかを確認してください。
液面が低い場合は、蒸留水を補充します。
バッテリ端子の腐食もあわせて点検し、清掃することで電気系統のトラブルを防ぐことができます。
5.ウインド・ウォッシャー液の量
ウインド・ウォッシャー液は、フロントガラスを清潔に保つために必要な液体です。
ウォッシャー液が不足すると、汚れや虫などが付着した際に除去できず、視界が悪化して運転支障をきたすことがあります。
点検方法は、ウォッシャー液リザーバータンクの液面を確認し、必要に応じて補充しましょう。
ウォッシャー液には、専用の洗浄剤を使用してください。
特に冬季には凍結防止剤が含まれているものを使用すると、寒冷地でも安心して運転できます。
6.ランプ類の点灯・点滅
ランプ類の点灯・点滅は、安全運転のために欠かせないチェック項目です。
ヘッドライト、ブレーキ・ランプ、ウインカ・ランプ、テール・ランプなどが正常に作動しているか確認しましょう。
「電球が切れた」「ヒューズの断絶」「リレー・スイッチの不良」などが原因でヘッドライトが点灯しないことがあります。
例えば、電球の寿命が切れている場合は新品を購入し付け替えることで解決します。
また、ランプのレンズが汚れている場合は清掃し、視認性を確保してください。
ランプの点灯状態を定期的に確認することで、夜間走行時や悪天候時の安全性を高めることができます。
7.タイヤの亀裂や損傷の有無
タイヤの亀裂や損傷有無の点検は、走行中のトラブルを未然に防ぐために重要なポイントです。
タイヤの表面や側面に亀裂や切れ目、膨らみがないかをチェックします。
これらの異常が見られる場合は、早急にタイヤを交換する必要があります。
また、異物が刺さっていないかも確認してください。
タイヤの状態を定期的に点検することで、パンクやバーストのリスクを減らし、安全な走行を維持することができます。
8.タイヤの空気圧
タイヤの空気圧は、走行性能や燃費、タイヤの寿命に影響を与えます。
適正な空気圧を維持することは、安全運転の基本です。
空気圧は、タイヤ接地部のたわみ面積や、タイヤゲージを使って車両の取扱説明書に記載された推奨値を基準にチェックしましょう。
タイヤの空気圧が低すぎると、タイヤの摩耗が早くなり、燃費も悪化します。
逆に高すぎると、乗り心地が悪化したり、タイヤがバーストしたりするリスクが高まります。
定期的に空気圧を測定し、適正な値に調整することが大切です。
9.タイヤの溝の深さ
タイヤの溝の深さは、雨天時の排水性を確保し、安全なブレーキングを可能にします。
溝が浅くなると、特に雨天時にハイドロプレーニング現象(タイヤと路面の間に水の膜ができて、ハンドルやブレーキなどが制御できなくなる状態)が起こりやすくなり、車両の制御が難しくなります。
タイヤの溝の深さは、スリップサインや専用の測定器で定期的に確認し、1.6mm未満になった場合は交換が必要です。
安全な走行を維持するためにも、タイヤの状態を常にチェックする習慣をつけましょう。
10.エンジンのかかり具合・異音
エンジンのかかり具合や異音は、車両の健康状態を示す重要な指標です。
エンジンを始動する際にスムーズにかかるか、また異常な音がしないかを確認します。
異音がする場合、ベルトの緩みやオイル不足、部品の劣化などのトラブルも考えられます。
トラブルを放置すると事故や大きな故障にもつながるため、早期に点検し、必要に応じて修理や部品の交換をしてください。
11.ウインド・ウォッシャー液の噴射状態
ウインド・ウォッシャー液の噴射状態は、視界を確保するために重要な点検項目です。
ウォッシャーノズルから適切に液が噴射されているかを確認します。
噴射が不十分な場合や方向がずれている場合は、ノズルの詰まりやホースの劣化が考えられます。
詰まりがある場合はノズルを清掃し、ホースの劣化が見られる場合は交換が必要です。
12.ワイパーの拭き取り能力
ワイパーの拭き取り能力は、雨天時や雪の日の視界を確保するために重要です。
ワイパーブレードが劣化していると、ガラス面に線が残ったり、拭き取りが不十分になります。
ワイパーブレードのゴム部分にひび割れや硬化が見られる場合は交換が必要です。
また、ワイパーの動き(高速・低速)がスムーズかどうかも確認し、異常がある場合は点検・修理を依頼しましょう。
13.ブレーキの踏み残りしろと効き具合
ブレーキの踏み残りしろと効き具合の点検は、車両の安全性を確保するために極めて重要です。
踏み残りしろとは、ブレーキをいっぱいに踏んだときのペダルと床との隙間です。
この部分が適切でない場合、ブレーキの効きが悪くなり、緊急時の制動距離が長くなる恐れがあります。
適切な踏み残りしろは、ペダルが遊び部分を超えてしっかりと抵抗を感じる位置です。
また、実際に走行し、ブレーキを踏んだ際の反応や制動力を確認します。
ブレーキの効きが悪いと感じた場合は、ブレーキパッドやディスク、ブレーキ液の状態などをチェックし、必要に応じて交換や補充をおこなってください。
14.駐車ブレーキの引きしろ
駐車ブレーキの引きしろは、車両を安全に停車させるために必要な点検項目です。
引きしろが多過ぎる場合、駐車ブレーキが十分に作動せず、車両が動いてしまうリスクがあります。
点検方法は、駐車ブレーキを引き、レバーの動き具合と引きしろの長さを確認します(ペダル式の場合は踏みしろ)。
適切な引きしろは、レバーがしっかりと固定され、車両が動かない状態です。
引きしろが適切でない場合は、ブレーキワイヤーの調整が必要です。
また、駐車ブレーキの効き具合を実際に確認し、傾斜のある場所で車両がしっかりと固定されるかをチェックします。
15.エンジンの低速・加速状態
エンジンの低速・加速状態の点検は、車両のパフォーマンスと燃費に直接影響を与えます。
エンジンがスムーズに始動し、アイドリング時に安定しているかを確認しましょう。
また、アクセルを踏んだ際の加速具合や異音がないかもチェックポイントです。
点検方法としては、エンジンを始動し、アイドリング時の回転数やエンジン音を観察します。
次に、走行中にアクセルを踏み込み、エンジンの反応と加速具合を確認します。
異常がある場合、燃料システムや点火プラグ、エアフィルターなどのトラブルがあるかもしれません。
これらの異常は、エンジンのパフォーマンス低下、予期せぬ故障や燃料悪化にもつながります。
まとめ:日常点検整備の15項目をチェックして社用車を安全に運行しよう
日常点検整備は、安全確保と環境保全の観点から非常に重要です。
企業における車両管理では、定期的な点検を怠ることで事故や故障のリスクが増加し、結果として業務に多大な支障をきたすことになる恐れがあります。
特に、タイヤの空気圧チェック、エンジンオイルの量と状態の確認、冷却水のチェックなどの基本項目は車両のパフォーマンスを維持するために欠かせません。
定期的な点検記録を残すことで、車両の状態を一元管理し、適切なメンテナンススケジュールを立てることが可能です。
また点検項目をリスト化し、チェックシートを使用することで管理が容易になり、点検漏れを防ぐことができます。
今回、日常点検が5分でわかる資料をご用意しました。
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