アルコールチェックの目視確認とは?義務化で企業がすべき対応を紹介

2022年4月に道路交通法が改正され、一定数以上の車両を使用している事業所でアルコールチェックの目視確認が義務化されました。道路交通法施行規則第九条の十第六号

しかし「アルコールチェックの目視確認は必ず対面でしなければならないのか」など疑問に思う企業もあることでしょう。

本記事では、目視のアルコールチェックに関する概要や義務化により企業がすべきことを解説します。

アルコールチェックの目視確認を怠った場合は、安全運転管理者の業務違反に問われるので注意が必要です。

アルコールチェックの目視確認について知りたい担当者は、参考にしてください。

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目次

アルコールチェックでおこなうべき「目視等で確認」とは

アルコールチェックでおこなうべき「目視等で確認」とは、以下のような項目を目視で確認することを指します。

  • 従業員の顔色
  • 目の動き
  • 吐いた息のにおい
  • 声の調子
  • 従業員の受け答え
  • 落ち着きのない立ち居振る舞い

アルコールチェックにおいて「目視等で確認」することはとても効果的です。

顔がほんのり赤い、目線が一点に留まらないといった酒気帯びの可能性に気づけます。

「目視等」とされているのは、アルコールの匂いやいつもと違う話し方など、嗅覚・聴覚による確認項目も含まれているためです。

なお、目視等によるアルコールチェックは、運転業務の開始前かつ運転業務の終了後の1日に2回実施することが定められています。

ただし、必ずしも運転の前後である必要はなく、従業員の出勤時や退勤時でも問題はありません。

検知器の測定値だけに頼り過ぎず、顔色や声の調子、受け答えの様子といった状況をしっかり確認しましょう。

アルコールチェック義務化に関する概要

アルコールチェックが義務化になった背景や対象となる企業、どのような内容に改正されたのかを解説します。

義務化になった背景

法改正をする前は、緑ナンバーを使用する運送業者のみにアルコールチェックが義務付けられていました。

2021年6月に飲酒運転をしていた白ナンバーのトラックが、登下校中の児童をはね死傷させた事故が発生。

当時は白ナンバーを運転する従業員へのアルコールチェックは義務化されておらず、この事故をきっかけに法改正の必要性が問題視されるようになりました。

その結果、2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、アルコールチェックの対象が白ナンバー車にも拡大されました。

2022年4月~目視等でのアルコールチェックが義務化

2022年4月1日の道路交通法改正では、以下の2点が義務化されました。

2023年12月~検知器によるアルコールチェックが義務化

2023年12月1日からは目視によるアルコールチェックに加えて、検知器を用いたアルコールチェックの実施が義務付けされました。道路交通法施行規則第九条の十第六号

検知器によるアルコールチェックの義務化は2022年10月からの予定でしたが、半導体不足により延期になり、2023年12月1日に施行になりました。

この法改正により安全運転管理者は、常時有効なアルコール検知器を保持することが求められています。(道路交通法施行規則第九条の十第七号

常時有効に保持とは、アルコール検査器が正常に作動し、故障がない状態に保持するという意味です。

対象となる企業

アルコールチェックの義務化の対象である企業は、以下のどちらかを満たす企業です。

  • 白ナンバーの自動車を5台以上使用している
  • 定員が11名以上の自動車を1台以上使用している

原付を除くバイクなどの自動二輪車も、1台を0.5台としてカウントするので注意してください。

なお、アルコールチェックの対象事業所の基準と安全運転管理者の基準は同じです。

業務中に運転するすべての従業員が、アルコールチェックの対象者となります。

アルコールチェックでは、目視とアルコール検知器の両方を用いたチェックが必要なので、チェック方法を正しく知っておきましょう。

アルコールチェック目視確認の方法

アルコールチェック目視確認のやり方について紹介します。

安全運転管理者による対面確認が原則

従業員のアルコールチェック目視確認は、対面が原則です。

なお、目視確認によるアルコールチェックは誰もができるわけではありません。

企業が選任した安全運転管理者もしくは副安全運転管理者、安全運転管理者の補助者が実施するように規定されています。

直行直帰の場合

従業員が直行直帰の場合でも、アルコールチェックは必須です。

対面での目視確認が難しい場合は、対面に準ずる方法で実施しましょう。

従業員にハンディタイプのアルコール検知器を携行させ、自分で測定したアルコール検知器の結果を報告させてください。

その上で、以下のような方法をおこなえば、対面でのアルコールチェックと同等とみなされます。

  • カメラ、モニターを使用し、安全運転管理者が従業員の顔色や声の調子を目視確認し、アルコール検知器による測定結果を確認させる
  • 携帯電話や業務無線など従業員と直接対話できる方法により、安全運転管理者が従業員の応答や声の調子などを確認し、アルコール検知器による測定結果を報告させる

ただし、メールやチャットなど従業員と直接対話ができない場合は、対面に準じた方法には該当しないので注意してください。

対面と違い、非対面でのアルコールチェックを実施する場合、従業員の情報は限定されます。

通話やビデオ電話を活用したアルコールチェックを徹底し、飲酒運転をさせないようにしましょう。

安全運転管理者が不在の場合

安全運転管理者が不在の場合は、副安全運転管理者もしくは安全運転管理者の補助者がアルコールチェックをしましょう。

副安全運転管理者は、20台以上の自動車を使用する事業所が、20台ごとに1人選任しなければなりません。

安全運転管理者の補助者とは、安全運転管理者が適任者を選任し、その業務を補助するよう指導を受けた者です。

事業所が複数ある場合は、ほかの事業所の安全運転管理者がアルコールチェックを実施しても問題はありません。

安全運転管理者が不在の際にも、きちんと対応できるようにチェック体制を構築しましょう。

アルコールチェックの基準となる数値

飲酒運転は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分けられます。

酒気帯び運転や酒酔い運転と判断された場合、違反点数や罰則、罰金が異なるので注意が必要です。

それぞれの違いについて解説します。

酒気帯び運転となる数値

酒気帯び運転とは、体内にアルコールが残存している状態で車を運転する行為を指します。

警視庁によると、酒気帯び運転の基準となる数値は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上です。

ここで気をつけなければならないのは、個人差や体調によって同じ量のお酒を飲んでも、体内に蓄積されるアルコール量が異なる点です。

少量だから大丈夫と過信せず、アルコールを口にしたら運転はしない、運転をする予定があるならアルコールは口にしないようにしましょう。

また、呼吸中のアルコール濃度によって、違反した場合の罰金や行政処分の内容が異なります。

呼気1リットル中のアルコール濃度基礎点数行政処分罰則(車両等を運転した者)
0.15mg未満なしなしなし
0.15mg以上0.25mg未満13点最低90日間の免許停止処分3年以下の懲役または50万円以下の罰金
0.25mg以上25点免許取り消し(欠格期間2年)3年以下の懲役または50万円以下の罰金
※出典:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警察庁Webサイト

呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg未満の場合、罰則等はありませんが飲酒運転であることに変わりはありません。

わずかな量のアルコールでも判断力や反射神経に影響を与える可能性があります。

0.15mg以上0.25mg未満のアルコール濃度が検出された場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。

この処分は決して軽いものではありません。

90日以上車の運転ができなくなることで、仕事や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

0.25mg以上のアルコールが検出された場合、酒気帯び運転として摘発されるだけでなく、運転免許が取り消されます。

免許取り消しになると、最短でも2年間は免許の再取得ができないので注意してください。

いずれにしても違反であるか否かではなく、人命や安全を脅かす大変危険な行為なので、飲酒運転は絶対にやめましょう。

酒酔い運転となる数値

酒酔い運転とは、「アルコールの影響で正常な運転ができない恐れがある状態」を指します。

酒気帯び運転と異なり、呼気中のアルコール濃度に関わらず、警察官が酒酔いと判断した場合に検挙されます。

酒酔い運転の判断基準は明確に定められていませんが、以下の点に当てはまる場合は、酒酔いと判断される可能性が高いでしょう。

  • 直線の上をまっすぐ歩くことができない
  • 呂律が明らかに回っていない
  • 警察官の質疑に対して正常な受け答えができない

酒酔い運転と判断された場合の罰則は、酒気帯び運転よりもさらに厳しいです。

5年以下の懲役または100万円以下の罰金に加え、即座に免許取り消しとなります。

免許取り消しになると、最短でも3年間は免許の再取得ができません。

「絶対に飲酒運転をしない」という強い意識を持つことが極めて重要といえます。

「少しなら大丈夫」「家まで近いから」といった甘い考えは持たないようにしましょう。

飲酒をする可能性がある場合は、事前に代替の交通手段を確保するなど計画的な行動が欠かせません。

※参照:警視庁

アルコールチェックを怠った場合の企業への罰則

アルコールチェックを企業が怠った場合の罰則について、詳しく解説します。

アルコールチェックを怠った場合

企業がアルコールチェックの義務を怠った場合、公安委員会が安全運転管理者および副安全運転管理者を解任する可能性があります。

また、安全運転管理者の選任を放置すると、使用者(企業の経営者など)に3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。(道路交通法第七十四条の三第一号

2022年の道路交通法の改正で、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則が5万円以下から50万円以下の罰金に引き上げられました。

従業員が飲酒運転をした場合

従業員が飲酒運転をした場合の罰則は以下のとおりです。

  • 酒酔い運転 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 酒気帯び運転 3年以下の懲役または50万円以下の罰金

参照:道路交通法第百十七条の二

損害賠償責任も発生し、従業員個人だけではなく、企業に対しての賠償責任義務は避けられません。

また、従業員の飲酒運転を見過ごしたとして、世間からの社会的信用を失う可能性があります。

従業員が飲酒運転をしないように、徹底した管理体制を構築していきましょう。

アルコールチェックの義務化で企業がすべきこと

アルコールチェックの義務化により、企業がすべきことを紹介します。

安全運転管理者の選任

安全運転管理者の選任状況を確認しましょう。

万が一選任していない場合は、選任しなければなりません。

以前から安全運転管理者の選任義務はありましたが、アルコールチェック対象事業所の基準と安全運転管理者の選任基準は同じです。

適切なアルコールチェックを実施するためにも、あらためて確認しておきましょう。

アルコール検知器の準備

アルコール検知器の準備も欠かせません。

据え置きタイプか持ち運び便利なハンディタイプの2種類で、電気化学式センサーと半導体式ガスセンサーがあります。

安全運転管理者は、アルコール検知器の取扱説明書をきちんと確認し、適切に管理する必要があります。

管理しやすく、使い勝手が良いものを選びましょう。

【改正法対応】アルコールチェッカーの使い方|企業が注意すべきポイントを解説

就業規則・社内規定の見直し

アルコールチェックの実施を進めるにあたり、就業規則や社内規定の見直しも必要です。

直行直帰や安全運転管理者がいない場合に、「どのように、誰が、いつ」実施するのかを明確にしましょう。

組織運営をおこなうための環境を整備することで、アルコールチェックの実施が円滑にできます。

記録と保管体制の整備

2022年4月1日より、アルコールチェックをおこなった際には結果を記録し、1年間保管することが義務付けられるようになりました。道路交通法施行規則九条の十第七号

記録すべき事項は、以下のとおりです。

  • 確認者氏名(安全運転管理者)
  • ドライバー氏名
  • 自動車のナンバー
  • 確認日時
  • 確認方法(アルコール検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的方法)
  • 酒気帯びの有無
  • 指示事項
  • その他

記録の形式は、紙またはデータのどちらでも可能です。

ただし、記録の破棄や消去、改ざんができないように、安全運転管理者が適切に保管する必要があります。

記録を保管する場所を決めたり、記録を定期的に確認したりすると円滑に運用ができます。

安全運転管理者は、自社の状況に合った方法で、記録と保管体制を整備するようにしましょう。

従業員への安全運転教育

一部の従業員だけでなく、すべての従業員がアルコールチェックの重要性や飲酒運転の危険性を理解する必要があります。

理解を深めるためには、定期的な研修や安全運転教育を実施しましょう。

場所や時間を問わず、従業員が受講できるeラーニングの活用がおすすめです。

例えば「JAF交通安全トレーニング」は、JAFが長年培ってきた交通安全ノウハウを従業員向けに配信しています。

安全運転管理者には専用のアカウントも発行できるため、従業員の学習結果と進捗状況を常に把握することが可能です。

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アルコールチェック運用時に理解しておくべきこと

アルコールチェック運用に際し、あらかじめ理解しておくべきことをまとめました。

安全運転管理者や担当者は、ぜひ参考にしてください。

対象となる従業員

社有車やレンタカー、従業員のマイカーに関わらず、業務で自動車を使用する従業員はアルコールチェックと記録をおこなう対象となります。

法律では、マイカーで通勤する従業員にはアルコールチェックの実施は義務付けられていません。

しかし、通勤中の事故であっても民法では使用者責任として、会社に責任を問われるリスクがあることに留意してください。

万が一事故が起きれば、責任を問われること以前に、人命や安全を脅かすことになります。

マイカー通勤の従業員を含め、従業員全員の安全と事故防止を前提に、アルコールチェックの対象を検討しましょう。

ドライバーが行き帰りで異なる場合

業務上の都合で、行きと帰りのドライバーが異なる場合は、それぞれのドライバーに運転前後のアルコールチェックが必須です。

行きに運転するドライバーは出発前にアルコールチェックをおこない、目的地に到着した時点で携帯電話やモニターなどでアルコールチェックをさせましょう。

帰りに運転するドライバーも同様です。

目的地を出発する前にアルコールチェックをおこない、帰社したら再度アルコールチェックが必要になります。

ほかの事業所の安全運転管理者がアルコールチェックを実施した場合は、検査後に所属する事業所の安全運転管理者にその結果を報告しましょう。

酒気帯びの確認を実施したと認められます。

従業員がアルコールチェックを拒否した場合

従業員がアルコールチェックを拒否した場合は、その従業員には運転をさせないようにしましょう。

いくら口頭で飲酒はしていないと言っていても、アルコールチェック未実施の従業員を運転業務にあたらせるのは危険です。

安全確保と事故防止のためにも、アルコールチェックをおこなわない従業員は、運転をともなわない業務に変更する必要があります。

その上で、アルコールチェックをおこなう意味や必要性を従業員にきちんと説明し、社内全体で法令を遵守しましょう。

アルコールチェッカーを選ぶポイント

アルコールチェッカーを選ぶときには、操作性やリアルタイムデータ送信機能、検知精度の3つのポイントを重点的に確認しましょう。

それぞれのポイントを解説します。

簡単に操作できるか

アルコールチェッカーは、操作が簡単で使いやすいものを選ぶことが重要です。

操作に手間取ると、チェックを怠る可能性が発生したり、業務効率が低下したりする可能性があります。

アルコールチェッカーは高性能であれば良いわけではなく、誰が使用しても正しく操作できることが重要です。

アルコールチェッカーを導入する際は、操作性も重視して検討しましょう。

検知データがリアルタイムで送信されるか

クラウド型のアルコールチェッカーの中には、検知データをリアルタイムで送信する機能を搭載しているものがあります。

管理者は遠隔地からでも検知結果を確認することができ、より厳重なアルコールチェック体制を構築することができます。

広範囲に事業所を展開している企業や、夜間や早朝に勤務する従業員が多い企業は、特に確認しておきたいポイントです。

また、送信されるデータの内容も確認しましょう。

呼気中のアルコール濃度だけでなく、日時や場所、検知者情報なども送信されると、より詳細な状況把握が可能です。

高い精度で識別するか

アルコールチェッカーの測定値の誤差が小さく、高い精度で識別できるかどうかも大切な要素です。

検知精度が低いアルコールチェッカーでは、正しい結果が得られず、飲酒運転のリスクを高めてしまう可能性があります。

アルコール検知器協議会(J-BAC)の認定を受けているアルコールチェッカーは、外部認定審査機関の審査により基準をクリアした機器で、一定の検知精度基準を満たしていることが証明されています。

精度が高いアルコールチェッカーを選び、正確にアルコールチェックを実施しましょう。

まとめ:アルコールチェックの目視確認しリスクマネジメントを強化しよう

2022年4月1日より改正された道路交通法では、従業員の酒気帯びの有無を目視等で確認することが義務付けられました。

2023年12月1日より、目視での確認のみならず、アルコール検知器による確認も義務付けられます。

従業員が飲酒運転をした場合、人命が脅かされるだけでなく、企業への社会的ダメージは大きいです。

飲酒運転に関するリスクマネジメントに備えるためにも、自社内でアルコールチェックを徹底しましょう。

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