飲酒運転・酒気帯び運転は、従業員や社会の人々を危険に晒すだけでなく、企業に多大な損害を与え、社会的信頼を失墜させます。
アルコールチェックはこのようなリスクを回避する有用な手段です。
しかし、直行直帰など業務の形態によっては、どのタイミングでアルコールチェックを実施すべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、アルコールチェックを実施する適切なタイミングについて、シチュエーション別に解説します。
アルコールチェックの具体的な方法や注意点などについても説明するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
アルコールチェックの概要
業務で自動車を使用する企業において、アルコールチェックについての知識は欠かせないものです。
本章では、企業におけるアルコールチェックについて解説します。
アルコールチェックは義務化されている
2022年度の道路交通法の改正により、安全運転管理者によるアルコールチェックの実施が義務化されました。
これにより、安全運転管理者の選任義務がある企業は目視やアルコール検知器によって、運転者の飲酒や酒気帯びを確認しなければなりません。
同時に、アルコール検知器を常時有効に保持することや、記録を1年間保存することも、義務化されています。
なお、アルコールチェックが義務化されている事業所は以下のとおりです。
- 自動車を5台以上使用する事業所
- 11人以上が同乗できる自動車を1台以上使用する事業所
以上に該当する事業所は、確実にアルコールチェックが実施できるようにしましょう。
参照元:道路交通法施行規則第九条の八/道路交通法施行規則第九条の十
アルコールチェックが義務化された背景
アルコールチェックが義務化された背景には、飲酒運転および酒気帯び運転に対する、社会的な非難の高まりが影響しています。
しばしば飲酒運転や酒気帯び運転が原因で痛ましい交通事故が発生しています。
企業によるアルコールチェックは、白ナンバーの検査基準が曖昧であるなど、以前は不十分なものでした。
そのため、2022年度以降は、法改正によって白ナンバーの自動車もアルコールチェックが義務化されました。
その結果、企業は緑ナンバー・白ナンバーを問わず、アルコールチェックの実施が求められるようになりました。
アルコールチェックを怠った場合の罰則
アルコールチェックを怠った場合は、罰則を課せられるリスクがある点に注意しましょう。
安全運転管理者が、アルコールチェックを適切に実施していない場合、行政によって安全運転管理者を解任させられるリスクがあります。
もし、行政より解任命令が発令されているにも関わらず、安全運転管理者を解任しなかった場合、企業には50万円以下の罰金が科されます。
もちろん、実際に飲酒運転や酒気帯び運転が発生した際も、厳格な罰則が課されます。
運転者・車両の提供者 | 飲酒運転:5年以下の懲役、または100万円以下の罰金酒気帯び運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 飲酒運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金酒気帯び運転:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金 |
飲酒運転や酒気帯び運転が発生した際に企業が被る損害は、以上のような罰則だけではありません。
アルコールチェックが適切におこなわれてないために、飲酒運転や酒気帯び運転が発生すれば、社会的な非難は免れないでしょう。
社会的な信頼が失墜すれば、企業の存続すら危ぶまれる事態に陥ります。
アルコールチェックを実施するタイミング
原則として、アルコールチェックは運転前後に対面で実施するものです。
しかし、業務によっては対面で実施するタイミングを確保できない場合もあるでしょう。
本章では、アルコールチェックを実施するタイミングについて、さまざまなシチュエーションを想定して解説します。
出社後に運転する場合
出社後に従業員が業務で自動車を運転する場合は、原則通り運転前後に対面で実施します。
アルコールチェックは、運転する度におこなう必要はありません。
また、必ずしも運転の直前・直後に限定されているわけではありません。
運転を含めた一連の業務の開始前・終了後なら、出勤・退勤時のタイミングでもチェックの実施が可能です。
もし、従業員の数が多く、個人ごとにアルコールチェックをおこなうことが難しい場合は、朝礼や終礼などで集合したタイミングに実施しましょう。
家から直行直帰する場合
業務の都合で従業員が事業所に寄らず、自宅から直接出先に向かったり、出先から帰宅したりする場合は対面でのアルコールチェックの実施が難しいことがあります。
そのため、ビデオ通話や電話などによる安全運転管理者の立ち合いの下、アルコールチェックをおこなわなければなりません。
安全運転管理者は運転者の顔色や声の調子などを目視で確認し、運転者はアルコール検知器を用いて検査します。
アルコールチェックを完了させたあとは、運転者が記録簿に記録します。
安全運転管理者は、運転者が適切にチェックできているか、映像や音声を通じて入念に確認しましょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ご確認ください。
出張先で運転する場合
遠方へ出張した従業員も、自動車を運転するならアルコールチェックを実施しなければなりません。
例えば、従業員が別の事業所に出張して自動車を使用する場合、現地の安全運転管理者がアルコールチェックを実施します。
その後、本来所属している事業所の安全運転管理者に報告すれば、アルコールチェックが完了したと見なされます。
なお、出張時にレンタカーやリース車を利用する場合も、アルコールチェックを実施しなければならない点に注意しましょう。
アルコールチェックの方法
アルコールチェックには、さまざまな実施方法があります。
目視による確認
目視でアルコールチェックを行う際は、運転者の顔色・応答の様子・呼気のにおいなどを入念に確認しましょう。
原則として、目視によるアルコールチェックは安全運転管理者、あるいは副安全運転管理者がおこないます。
ただし、業務の都合などで両者が対応できない場合は、事業所で選任された「安全運転管理者の業務を補助する従業員」でも対応が可能です。
アルコール検知器による確認
アルコール検知器なら、運転者が息を吹き込むだけで飲酒や酒気帯びをチェックできます。
アルコール検知器は、必ず事業所に設置したり、運転者に携行させたりしなければなりませんが、機種やメーカーに制限はありません。
呼気中のアルコールを検知し、光・音・数値などで結果を示せるタイプであれば、どのメーカーの製品でも使用が可能です。
なお、直行直帰時のアルコールチェックには、携帯式のアルコール検知器を利用しましょう。
スマホやカメラを使った確認
直行直帰や出張のように、対面でのアルコールチェックが難しいタイミングでは、検知器だけでなくスマートフォンやカメラを用いて確認しましょう。
映像越しに見える表情や応答時の声の調子も、飲酒や酒気帯びを確認する際の判断材料になります。
スマホやカメラを使った確認は、なりすましを防止する上でも有効です。
アルコールチェックをする際の注意点
本章では、アルコールチェックを実施する際の注意点について解説します。
いずれの注意点も正確なチェックを実施する上で不可欠です。
記録する項目を把握する
適切なデータを得るためにも、チェック項目は把握しましょう。
アルコールチェックの結果は、以下の項目を記録します。
- 確認者の名前
- 運転者の名前
- 業務で使用する自動車の登録番号、または識別用の記号や番号等
- 確認日時
- 確認方法(アルコール検知器の使用の有無・非対面時はカメラやスマートフォンなどの使用の有無)
- 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要事項
チェック時の記録は1年間保存する
アルコールチェックをした際の記録は、1年間保存しなければなりません。
チェック時の記録は決められた場所に保管し、紛失しないようにしましょう。
特に従業員数が多い場合は膨大な量になるため、ツールの導入やデータでの運用も検討しましょう。
アルコール検知器を常時有効に保持する
アルコール検知器を常時有効に保持することも、安全運転管理者の重要な責務です。
故障がない状態を維持するために、安全運転管理者は以下の点に注意して検知器を保管しなければなりません。
【毎日確認する事項】
- アルコール検知器の電源が確実に入るか
- アルコール検知器に損傷がないか
【最低でも週1回は確認する事項】
- 酒気を帯びていないものがアルコール検知器を使用した際に、アルコールを検知しないこと
- アルコールを含む液体、あるいは希釈したものを口内に噴霧した際に、アルコール検知器が検知すること
参照元:自動車運送業におけるアルコール検知器の使用について|国土交通省
アルコールチェックを実施する際も、検知器が問題なく作動するか必ず確認しましょう。
安全運転管理者が不在時の対応を決めておく
業務の都合や休暇などで、安全運転管理者が不在の際の対応も必ず決めておきましょう。
アルコールチェックを確実におこなえるよう、実施する担当者や、手順を記載したマニュアルなどを用意すれば、安全運転管理者の不在時にも対応できます。
また、日ごろからアルコールチェックの重要性を従業員に周知すれば、安全運転管理者が不在でも自主的に実施できる環境を構築できます。
まとめ:アルコールチェックは確実に実施できるタイミングを選ぼう
アルコールチェックの実施は、業務で自動車を使用する企業が理解しておくべき事項です。
飲酒運転や酒気帯び運転を防止するためにも、安全運転管理者が中心となり、確実に実施しなければなりません。
業務で運転をする際は、出社・直行直帰に関わらずアルコールチェックを実施しましょう。
対面でアルコールチェックを実施できない場合は、携帯式の検知器や、スマホ・カメラを活用し、着実に確認・記録できる体制を整えましょう。
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