社用車の耐用年数や減価償却の仕組み・計算方法について解説

「社用車を導入したいけど、会計処理の方法が気になる」というお悩みを抱えていませんか?

企業が社用車を導入する場合、耐用年数や減価償却についてきちんと理解しておく必要があります。

この記事では、社用車の耐用年数や減価償却の仕組みについて解説します。

社用車の導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。

スマホやタブレットでの受講も可能

耐用年数について

耐用年数について

まずは減価償却を理解するうえで重要な「耐用年数」について解説します。

耐用年数とは

耐用年数とは会計処理の際に用いる考え方で、自動車などの固定資産を通常の用途に沿って使用した場合に、本来期待する役割を果たすと考えられる期間のことです。

一般に、取得した固定資産は時間が経つにつれて価値が減少し、最終的には価値を失います。

このような時間の経過とともに価値が減少する固定資産のことを「減価償却資産」といいます。

そのため「耐用年数は減価償却資産が使用可能な期間」と言い換えることが可能です。

また、耐用年数には以下のような特徴があります。

なお、主な減価償却資産の種類と耐用年数の一覧は、国税庁のホームページで確認できます。

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

耐久年数との違い

耐用年数と似た言葉で「耐久年数」があります。

耐久年数とは、製品を問題なく使用できる期間のことです。

法律で定められているものではありませんが、製造元などの調査・実験結果を基に定められます。

一方の耐用年数は、固定資産が使用可能と考えられる期間のことです。

耐久年数は問題なく使用できる期間の目安ですが、耐用年数を過ぎても、機能面で問題がなければ使い続けられます。

減価償却について

減価償却について

耐用年数について理解できたら、次に会計処理の考え方である「減価償却」について理解しましょう。

社用車は減価償却資産であるため、減価償却の決まりに基づいて会計処理しなければなりません。

減価償却とは

減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少する資産の価値を、耐用年数に応じて各事業年度の費用に配分し、その金額を減価償却費として計上することです。

減価償却は、業績を正しく把握することを目的とした会計処理の方法です。

自動車のような固定資産を費用として計上すると、購入した事業年度だけ、費用が大幅に増加します。

これでは購入以降の固定資産の使用による利益が見えづらくなり、実際の業績を正しく把握できません。

そのため、減価償却をおこなって、固定資産の取得が業績に与えた影響を判断しやすくするのです。

耐用年数と減価償却資産の関係

減価償却の対象となるのは、以下の条件を満たす資産です。

  • 耐用年数が1年以上
  • 取得価額が10万円以上

ほとんどの場合、社用車はいずれの条件にも当てはまるため、固定資産に該当します。

そのため、減価償却資産として会計処理する必要があります。

なお、土地や骨董品のように、時間の経過によって価値が減少しないものは減価償却資産には該当しません。

社用車の耐用年数とは

社用車の耐用年数とは

社用車の耐用年数は、新車と中古車で異なります。

また、自家用車と、タクシーなどの運送事業用自動車でも違いがあります。

新車の耐用年数

自動車の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって定められています。

詳しくは以下のとおりです。

細目(構造・用途が一般用のもの)耐用年数
小型車(総排気量0.66L以下のもの)4年
貸物自動車(ダンプ式)4年
貸物自動車(その他)5年
報道通信用のもの5年
その他のもの6年
2輪・3輪自動車3年
自転車2年
リヤカー4年
参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
細目(構造・用途が運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの)耐用年数
小型車(積載量2t以下の貨物車、総排気量2L以下のその他のもの)3年
大型乗用車(総排気量3L以上のもの)5年
その他のもの4年
乗合自動車5年
自転車、リヤカー2年
被けん引車その他のもの4年
参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

表のように自動車の構造や用途によって耐用年数が違うため、自社の社用車がどの項目に当てはまるのか、きちんと把握しておきましょう。

例えば、普通自動車を社用車として使用している場合、構造・用途は「一般のもの」、細目は「その他のもの」に該当するため、耐用年数は6年です。

軽自動車の場合は「小型車(総排気量0.66L以下のもの)」に当てはまるため、耐用年数は4年です。

また、運送業やレンタカー業などで使用する自動車は一般の自動車とは区別されます。

同じ車種でも耐用年数が異なるので注意しましょう。

中古車の耐用年数

中古車を取得した場合、新車に比べて耐用年数が短くなります。

会計処理の際は「見積法」または「簡便法」という手法を用います。

詳しくは、以下に掲載している国税庁のホームページでご確認ください。

参考:中古資産の耐用年数|国税庁

社用車を減価償却する際に抑えるべきポイント

社用車を減価償却する際に抑えるべきポイント

自動車を購入する際、本体にかかる費用以外にも、付属品や税金など、さまざまな費用がかかります。

また、新車と中古車では、取得価額や耐用年数が異なります。

そういった場合、減価償却の計算はどうなるのでしょうか。

ここからは、社用車を減価償却する際に抑えるべきポイントを紹介します。

社用車の取得価額

固定資産は、取得価額をもとに減価償却をおこないます。

取得価額とは、固定資産の購入にかかった金額のことで、購入価格に付随費用を加えた金額のことです。

自動車を購入する場合、自動車本体や付属品にかかる費用以外にも、納車費や税金など、さまざまな費用がかかります。

自動車購入に関わる費用は

  • 取得価額に含むべきもの
  • 取得価額に含まなくて良いもの
  • 経費処理すべきもの
  • 資産計上すべきもの

に分けられます。

具体的には以下のとおりです。

取得価額に含むべきもの自動車本体価格、付属品、納車費用、中古車の未経過自動車税、中古車の未経過自賠責保険料
取得価額に含まなくて良いもの自動車環境性能割、検査登録・車庫証明などの法定費用
経費処理すべきもの自動車税、自動車重量税、自賠責保険料、リサイクル資金管理料金
資産計上すべきものリサイクル預託金

自動車本体や付属品、納車にかかる費用は、取得価額に含まれます。

一方で、税金や保険料などは自動車を所有することによって発生する事後的費用となるので、取得価額には含めず、別途経費として計上します。

新車、中古車による償却期間の確認

前述のとおり、新車と中古車では耐用年数が異なります。

そのため、減価償却の期間も違います。

一般的に、法定耐用年数の基準となっているのは新車です。

一方の中古車の耐用年数は、国税庁のホームページで確認することをおすすめします。

中古車を社用車として使用している場合は、会計処理の際に必ず国税庁のホームページを確認しましょう。

参考:中古資産の耐用年数|国税庁

社用車を減価償却する際の計算方法

社用車を減価償却する際の計算方法

社用車の減価償却費を算出するには、いくつかの計算方法があります。

それぞれの計算方法について解説します。

定額法

定額法とは、取得した固定資産の耐用年数の期間内において、毎期一定額で減価償却費を計算する手法です。

具体的な計算方法は「車の取得価額×定額法の償却率」です。

事業年度の途中に社用車を購入するなど、1年間にわたって使用していない場合は月数按分します。

詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

参考:定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

定率法

定率法とは、未償却の残高に対して、毎年一定割合ずつ減価償却する手法です。

償却初年度が最も金額が大きくなり、その後は年々償却金額が減っていきます。

計算方法は「未償却残高×定率法の償却率」です。

詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

参考:定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

リース期間定額法

基本的に、カーリースに減価償却の概念はありません。

しかし、リース期間やリース料によっては、減価償却資産として会計処理する必要があります。

具体的には以下のとおりです。

リース資産の種類会計処理
1年以上の長期間リース
リース料が300万円以上
減価償却資産として計上
リース期間が1年以内
リース料の総額が300万円以下
減価償却の対象にならない

リース資産を減価償却する場合に用いる計算方法が、リース期間定額法です。

計算方法は「((リース資産の取得価額ー残価保証額)/リース期間の月数)×その事業年度におけるそのリース期間の月数」です。

詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

参考:減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)|国税庁

社用車を減価償却する際の注意点

社用車を減価償却する際の注意点

社用車を購入する際、ローン払いを選択したり、年度途中に購入したりする場合もあるでしょう。

そういった場合は、減価償却の際に注意が必要です。

最後に、社用車を減価償却する際の注意点を紹介します。

ローン払いの場合は経費計上のやり方に注意する

社用車を購入する場合、自動車本体や付属品に関してはローンを組めます。

ローン払いでも減価償却の対象になりますが、二重計上しないように注意してください。

ローン払いでは毎月一定額を返済しますが、減価償却した上に月々の返済額を経費として計上すると、二重計上になります。

元本部分は減価償却のみ対象となり、ローンの返済額は経費計上できないので注意しましょう。

ただし、元本部分に上乗せされる支払利息は経費として計上できます。

そのため、社用車をローンで購入する場合、

  • 元本部分:減価償却
  • 支払利息:経費

として会計処理しましょう。

年度途中に取得した場合は月割りで計算する

前述のとおり、事業年度の途中に社用車を購入すると、減価償却費は月割りで計算します。

そのため、初年度からフルに減価償却費を計上したい場合は、事業年度の最初の月に社用車を入手するようにしましょう。

中古車は購入時までの経過期間の起算日に注意する

中古車の耐用年数を算出する場合、購入時までの経過期間を確認しなければなりません。

購入時までの経過期間は、初度登録年月を起算日とします。

初度登録年月は自動車検査証(車検証)に記載されているので、車検証を確認しましょう。

取得価額が30万円以下なら一括して算入できる

取得価額が30万円以下の少額減価償却資産であれば、減価償却せず、一括して会計処理できる特例があります。

社用車の場合、中古車を購入した際に適用対象となる場合があります。

なお、対象となるのは以下の2つの条件を満たす法人です。

  • 青色申告法人である中小企業者または農業協同組合等
  • 常時使用する従業員の数が500人以下(2020年3月31日までの取得については1,000人以下)

ただし、少額減価償却資産の取得価額の合計には上限があります。

また、この特例の適用を受けるには、事業年度において少額減価償却資産の取得価額に相当する金額について損金処理するとともに、確定申告の際に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を提出することも必要です。

参考:中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁

まとめ:社用車の耐用年数は大きさや種類ごとに異なる

まとめ:社用車の耐用年数は大きさや種類ごとに異なる

社用車は固定資産に該当するため、耐用年数や減価償却について理解しておく必要があります。

耐用年数については、自動車の大きさや種類によって異なります。

自社で導入する社用車が何年になるのか、確認しておきましょう。

なお、社用車を導入する際は、従業員一人ひとりへの交通安全教育も重要です。

JAFメディアワークスでは、JAFが長年培ってきた交通安全のノウハウを、eラーニング「JAF交通安全トレーニング」として提供しています。

社用車の導入をお考えの場合は、こちらの教材もぜひご検討ください。

スマホやタブレットでの受講も可能

JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。