ながらスマホの事故件数が増加中!企業に必要な安全運転対策を徹底解説
携帯電話の革命児と呼ばれたiPhoneが日本に上陸したのが2008年のこと。
時は流れ、「スマホ」の世帯普及率が90%を超えた現代ですが、この頃「ながらスマホ」という言葉を当たり前に耳にするようになりました。
スマートフォンを注視しながら別のことをする「ながらスマホ」は、歩行中はもちろん、車の運転中にも重大な事故を引き起こす要因として危険視されています。
運転業務中にも、業務連絡や訪問先の確認、地図アプリの操作など、スマートフォンを操作したくなる場面は多々発生します。
万が一「ながらスマホ」が原因による事故を起こせば、被害が重大化しやすいだけでなく、企業の信用に大きな影響を与える可能性もあります。
そこでこの記事では、警察庁が発表した統計資料をもとに、ながらスマホを含む携帯電話使用等による事故件数や危険性を紹介します。
それらをもとに、企業として取り組むべき安全運転対策について考えてみましょう。
社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!
目次
ながらスマホの事故件数は増加傾向|最新データで見る違反と事故の関係

運転中のスマートフォン・携帯電話等の使用については、2019年12月に道路交通法の改正によって罰則が強化されました。
警察庁の資料によれば、2020年には携帯電話の使用などに起因する交通事故が大幅に減少したものの、2021年以降は再び増加傾向に転じています。
なお、警察庁資料の「携帯電話等使用」には、スマートフォンだけでなく携帯電話やカーナビ等の画面表示装置の注視も含まれます。この記事では、伝わりやすい表現として、これらを含めて「ながらスマホ事故」として表記します。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用|警察庁
2025年に起きた「携帯電話等使用」による死亡・重傷事故は過去7年ワーストの148件
| 年 | 死亡事故 | 重傷事故 | 死亡・重傷事故件数 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 29件 | 80件 | 109件 |
| 2020年 | 12件 | 55件 | 67件 |
| 2021年 | 15件 | 64件 | 79件 |
| 2022年 | 19件 | 74件 | 93件 |
| 2023年 | 26件 | 103件 | 129件 |
| 2024年 | 32件 | 106件 | 138件 |
| 2025年 | 26件 | 122件 | 148件 |
2025年中の死亡・重傷事故は148件と、運転中のながらスマホ等に関係する法律の改正以降、最も多い件数になりました。
死亡・重傷事故は、単なる物損事故とは異なり、被害者の人命やその後の生活に大きな影響を及ぼします。
企業としてはこの数字を他人事とせず、車を運転する機会がある以上、誰にでも起こり得るリスクとして考えていく必要があります。
死亡事故率は使用なしと比べて約3.4倍
信号無視や一時停止などの標識を無視するような違反行為に比べると、第三者から見て行為が露見しにくい「ながらスマホ」による運転は、その性質上も違反意識が軽薄になりがちです。
しかし、統計によると携帯電話等使用による事故を起こした場合、死亡事故率が使用なしと比較して3.4倍(※)も高くなっていることがわかっています。
※2021年〜2025年の第1当事者が原付以上の交通事故件数に占める死亡事故件数の割合を集計したもの
目の前の交通状況から意識が離れれば、危険回避の判断・操作に深刻な遅れが生じ、ブレーキ操作が間に合わず、重大事故に発展しやすくなります。
重大事故における人的要因の9割以上が「前方不注意」によるもの
携帯電話等使用による死亡・重傷事故の人的要因のうち、前方不注意が9割以上を占めています。
| 人的要因 | 件数 | 構成率 |
|---|---|---|
| 前方不注意 | 536件 | 91.8% |
| 安全不確認 | 25件 | 4.3% |
| 動静不注視 | 11件 | 1.9% |
| 操作不適 | 5件 | 0.9% |
| 交通環境 | 3件 | 0.5% |
| 予測不適 | 2件 | 0.3% |
| 調査不能 | 2件 | 0.3% |
| 合計 | 584件 | 100.0% |
この統計から、ながらスマホ事故の多くはスマートフォンにドライバーの意識が向いたことで、本来であれば対応できたはずの前方の危険に気づかなかったり、発見が遅れていると考えられます。
画面を見た一瞬でも交通状況は変化します。
ながらスマホは、その状況把握の質を大きく低下させる行為といえます。
ながらスマホで事故が起きやすくなる2つの理由

「ながらスマホ」が危険な理由は、片手運転によって操作ミスを引き起こす可能性を高めるだけではありません。
ここからは具体的な例を挙げつつ、危険な理由を深掘りして解説します。
①視線が画面に向くことで危険の認知が遅れる

「時間を確認するだけ」「連絡通知をチェックするだけ」、このような些細な操作であっても、少なくとも数秒間はスマートフォンの画面を注視することになります。
内閣府大臣官房政府広報室の資料では、60km/hで走行する車は1秒間で約17m進むと説明されています。
この17mという距離をわかりやすく例えると、おおよそ路線バス1.5台分に相当するものです。
ドライバーからすれば“ちょっと”の時間であっても、スマートフォンを見ている数秒の間に前方の交通状況は刻々と変化しています。
前方車両の減速や歩行者の横断、信号の変化などに対する認知が遅れれば、事故を引き起こす可能性が高まります。
出典:やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も! | 政府広報
②注意がスマホに向くことで判断力が低下する
「ながらスマホ」は、画面の内容を理解しようとすることで、運転中の意識までスマートフォンに向いてしまいます。
「メッセージを読む」「返信内容を考える」といった行動は、運転に必要な判断力を低下させる要因になります。
事故を防ぐためには、周囲を目で見るだけでなく、その状況を理解し、次に起こりうる危険を予測することが欠かせません。
ながらスマホは、この「見る→理解する→予測する」という一連の流れを妨げてしまいます。
「ながらスマホ」運転の罰則とリスク

「ながらスマホ」については、罰則が強化されている点も押さえておく必要があります。
ここでは、その罰則の内容と事故のリスクについて整理します。
道路交通法違反となる「ながらスマホ」の罰則内容
道路交通法第71条第5号の5では、自動車等が停止しているときを除き、携帯電話等を手で保持して通話したり、スマートフォンやカーナビなどの画像を注視したりする行為を禁止しています。
罰則・反則金・基礎点数については以下の通りです。
・携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
反則金:適用なし(刑事手続きの対象のため)
基礎点数:6点
・携帯電話使用等(保持)
罰則:6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
反則金:普通車18,000円
基礎点数:3点
「保持」は、反則金を納付すれば刑事手続きに進まない交通反則通告制度(通称:青切符)の対象です。
一方で、「交通の危険」は、実際に事故など危険を生じさせた場合に、より重い違反として扱われます。反則金の適用はなく、刑事手続きの対象になります。
参考:道路交通法第71条(運転者の遵守事項)第5号の5 | e-Gov 法令検索
罰則よりも重要な“事故を防ぐ”という視点
会社において、従業員のながらスマホ対策を考える時に大切なのは、警察の取り締まりを避けるという指導に終始しないことです。
何より重要なことは、「ながらスマホ」によって誘発される事故発生を防止し、歩行者や自転車、同乗者、周囲の車両、そしてドライバー自身の命を守ることです。
罰則の存在は抑止力として有効ですが、事故発生につながるリスク、事故が起きた時の重大事故に発展するリスクを理解して運転業務についてもらうことが大切です。
企業が取り組むながらスマホ事故防止策

運転中の「ながらスマホ」を防ぐには、ドライバー個人の意識に頼るだけでは不十分です。
業務中にやむを得ずスマートフォンを使用する状況があるなら、企業としてその実態を把握し、使用機会を減らす仕組みづくりが求められます。
スマホを見ない・使わないための運転ルールと社内体制づくり
「ながらスマホ」を防止するには、「運転中はスマートフォンを見ない・操作しない」というルールを明確にし、社内で徹底することが重要です。
具体的には以下のようなルールをあらかじめ決めておきましょう。
- 運転中はスマートフォンをカバンにしまう
- 確認が必要な場合は安全な場所に停車してからおこなう
- 管理者や社内の連絡担当者は、運転中のドライバーに即時返信を求めない
ドライバー本人の意識だけに頼るのではなく、企業全体で「ながらスマホ」を防ぐルールを整えていくことが求められます。
焦りを生まない業務設計とヒヤリハットの共有

「納品時間が迫っている」「訪問先に遅れそう」「予定変更が必要」といった場面では、焦りや急ぎの気持ちから、ながらスマホをしてしまいがちです。
こうした状況を防ぐには、会社として無理のない運行計画や余裕を持ったスケジュールを組むこと、遅延時の報告ルールをあらかじめ決めておくことが有効です。
精神的に余裕が生まれることで、スマートフォンを確認する必要性そのものを減らすことができます。
あわせて、実際に起きたヒヤリハットを社内で共有することも重要です。
「地図アプリを見ていて前方車両に気づくのが遅れた」など、事故には至らなかった危険場面を共有することで、「ながらスマホ」のリスクを自分事として捉えやすくなります。
まとめ:ながらスマホ事故を防ぐには継続的な指導・教育が必要
この記事では、ながらスマホに起因する事故の件数や危険性、企業が実施すべき安全運転対策を解説しました。
「ながらスマホ」は、ほんの一瞬の行動に見えても、危険の発見や判断を遅らせ、重大な事故につながるおそれがあります。
企業としては、「運転中にスマートフォンを見ないルールの徹底」「無理のない運行計画」「ヒヤリハットの共有」などを通じて、ドライバーのながらスマホを防止する仕組みを整えることが求められます。
一方で、意識や行動は一度の周知だけでは定着しにくく、忙しい業務の中で確認が甘くなることもあります。
だからこそ、継続的な指導・教育を実施し、ドライバー自身が自然と安全な行動を選択できる力を身につけていく必要があります。
そこで活用したいのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレでは、JAFが長年培ってきた交通安全の知見を活かした交通安全教材で、毎月e-ラーニング形式で配信しています。
実際の運転場面を想定した教材を通じて、危険を予測する力を養い、安全運転に関する知識を継続的に学べる点が特徴です。
また、ドライバーの学習結果を蓄積・管理できるため、一人ひとりに寄り添った指導・教育に活用することができます。
さらに、時間や場所に縛られずにパソコンやスマートフォンから受講できるので、業務の合間で効率よく学習できるのがメリットです。
ながらスマホ対策を一時的な注意喚起で終わらせず、企業全体の安全文化として定着させていきましょう。
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