運転業務のある企業必見!ヒヤリハットマップを作成することで「見える化」する交通安全対策とは?
交通事故が起きる時には小さな「ヒヤリ」や「ハッ」とする場面が積み重なっているものです。
見通しの悪い交差点、歩行者や自転車が集中する地点、左折時のミラーの死角、右折時のピラーの死角など、ドライバーとして気を付けるべき危険はそこかしこに存在しています。
しかし、人間が運転していれば注意不足はいつか起こり得るもの…。
それを補うために、危険情報を収集し、地図上に落とし込んで社内共有し危険に備えようというのが「ヒヤリハットマップ」です。
この記事では、ヒヤリハットマップを活用した企業の交通安全対策を考えていきます。
今気をつけるべき交通安全の話題が週次でわかる
目次
交通事故は「起きた後」ではなく「起きる前」の共有が重要

重大事故を防ぐために本当に必要なこと、それは事故が起きた後の是正に限りません。
事故に至る前の小さな異変や危険を拾い上げ、組織として共有することが、実効性のある交通安全対策の基礎となります。
ヒヤリハットは重大事故の前触れ
まず、「ヒヤリハット」とは、事故には至らなかったものの、当事者が危険と感じた場面のことをいいます。
このヒヤリハットを解明することが事故防止の観点で重要とされており、それを証明する理由のひとつに「ハインリッヒの法則」があります。
これは、「1件重い災害があったとすると、背後には29件の軽傷事故があり、さらにその背後には300件の損傷のない事故が存在する」という考え方です。
「損傷のない事故」とは、障害や物損の可能性があるものとされているので、ここでは「ヒヤリハット」と定義します。
そのことから、重大事故の前には多くの危険が潜んでいるといわれ、だからこそ、事故に至らなかった原因を追究し、対策につなげることが重要とされます。
参考:ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)|厚生労働省
ヒヤリハットマップとは?

先に解説した通り、ヒヤリハットは重大事故を未然に防ぐための重要な手がかりです。
しかし、せっかく現場で感じた危険も、個人の経験のまま埋もれてしまっては組織全体の事故防止にはつながりにくくなります。
必要なのは、ヒヤリハットを集め、整理し、誰もが分かる形で共有することです。
その具体的なひとつの方法が「ヒヤリハットマップ」です。
ヒヤリハットマップは事故が実際に起きた場所だけを共有するものではありません。
「接触しそうになった」「見えにくかった」など、事故寸前のヒヤリハット発生場所を網羅し、危険予測すべき箇所を地図上に整理・社内共有するための仕組みといえます。
「見える化」でヒヤリハットマップを事故防止に活かす|好事例紹介
日々の業務中に蓄積されたヒヤリハットをドライバーから抽出し「見える化」すれば、「いつどこで」「どのような危険が起きやすいのか」を把握しやすくなり、注意喚起による事故防止や安全運転意識の向上につなげることができます。
ここでは、実際に取り組んでいる地方自治体の好事例を紹介していきます。
危険箇所を地図上で共有する発想|埼玉県さいたま市桜区

埼玉県さいたま市桜区では、学校や保護者などからの情報をもとに、区内小学校ごとの周辺危険箇所をまとめて「交通安全ヒヤリハットマップ」を作成し、児童に配布しています。
危険箇所の共有は、単に場所を知らせるためだけではなく、関係者の危険意識を高めるための手段でもあります。
地域と密着し身近な危険を可視化する|東京都三鷹市

東京都三鷹市では、株式会社SUBARU、一般社団法人トヨタ・モビリティ基金、豊田都市交通研究所と連携し、「三鷹市ヒヤリハット体験マップ2025」を作成しています。
市立小学校15校の5年生約1,600人を対象に、日常生活の中で「ヒヤリ」と感じた場所や状況を調査し、市内973箇所の交通危険箇所をリスク度合い別に分類し、WEBの地図上に表示しています。
地図上の危険箇所を選択すると、実際のヒヤリハット体験の内容が確認できます。
事故防止策の検討などに活用できる取り組みです。
自社周辺や配送ルートの共有|宮崎県

厚生労働省宮崎労働局では、車の運転は時間帯や天候などの影響を大きく受けるため、ドライバー一人ひとりが周辺の状況に対応して危険を認識することが大切だと考えています。
このことから、事業者に対して運転に携わる人の「ヒヤッ」とした経験をまとめ、「交通ヒヤリマップ」を作るよう案内しています。
企業が交通ヒヤリハットマップを活用するメリットとして、地域全体の危険箇所だけでなく、自社を起点とした配送ルートや営業ルートなど、実務で運転する場所に焦点を当てて注意を促すことができます。
企業におけるヒヤリハットマップの必要性

企業がヒヤリハットマップを作成することで、ドライバーが現場で感じた危険を組織全体の集合知に変換し、事故防止につなげることができます。
特定の人に経験値が偏り属人化しやすいヒヤリハットの知見も、マップを作成することで標準化を実現できます。
まずは自社周辺と主要ルートから集める
最初から業務エリアをすべて網羅しようとすると、運用面のハードルが高くなってしまいます。
まずは、自社を起点とした周辺エリアや主要な幹線ルート、出入りの多い取引先周辺など、通行頻度の高い場所から着手するのが現実的です。
場所だけでなく「どんな危険か」具体的に残す
過去のヒヤリハットを記録する際は、場所だけでなく、なぜ危険と感じたのかといったドライバーの心象もセットで残すことが重要です。
たとえば、「特に秋以降の夕方は、西日により対向車線が見えにくい」「昼時に路上駐車が多く見られ、路駐車両の間から歩行者が飛び出してくることがある」といったように、できるだけ具体的に記録しましょう。
ベテランドライバーの経験と若手ドライバーの視点
ベテランドライバーの経験は、事故を防ぐうえで貴重な教訓になる一方で、若手ドライバーの柔軟な視点から気づけることもあります。
たとえば、ベテランドライバーは「あの交差点は危ない」「あの納品先はバック時に注意」など、今までの経験から蓄積された情報があります。
反対に若手ドライバーは、「ここはナビだと案内できなけど、地図アプリならできる」など、デジタルツールを活用した情報収集・視点に長けていたりします。
運転時に危険が生まれやすい場所を、ドライバーそれぞれが蓄積していくことは良いことです。
しかし、それが言語化・可視化され共有されなければ属人化が起き、他のドライバーに共有することが難しくなります。
ヒヤリハットマップを作成すれば、個人の経験を組織の共有財産に変えることができます。
結果として、この情報を次世代にもつなげることができ、教育の質も平準化しやすくなります。
マップ作成後は「見える化」した危険を教育に落とし込む

ヒヤリハットマップは、作成そのものが目的ではなく、あくまで手段です。
見える化した危険を、日々の安全教育や社内の注意喚起に繰り返し活用してこそ、本当の価値が生まれます。
朝礼・ミーティング・研修などに繰り返し使う
せっかく危険箇所をヒヤリハットマップによって「見える化」しても、共有が一度きりでは効果は限定的です。
朝礼、会議、事故防止ミーティング、乗務前指導、新人研修などに組み込み、繰り返し伝えていくことでその効果を最大限に発揮させましょう。
報告しやすい環境がヒヤリハットマップを育てる
ヒヤリハットを集めるうえで欠かせないのが、ドライバーが報告しやすい環境づくりです。
「報告したら怒られる」「自分のミスとして責められる」と感じるような職場環境だとしたら、現場の声が集まらないことは明白です。
ヒヤリハット報告を責任追及の材料とするのではなく、事故を未然に防ぐための貴重な財産として扱うことが大切です。
まとめ:継続的な学習で事故を防ぐ意識を高めよう
この記事では、ヒヤリハットマップを活用した企業の交通安全対策について解説しました。
社用車での事故が発生すれば、企業は経済的損失だけでなく、社会的な信用低下のリスクを負う可能性も考えられます。
だからこそ、事故が起きる前に「ヒヤリ」や「ハッと」した経験を可視化し、社内で共有することが重要です。
ヒヤリハットマップを活用することで、ドライバー一人ひとりが危険を自分事捉えやすくなり、さらに継続的な学習を組み合わせることで危険を予測する力や場面ごとの判断力を高めることができます。
そこで、ヒヤリハットマップの運用とあわせて活用したいのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレとは、JAFが長年蓄積してきた交通安全のノウハウを活かした、e-ラーニング形式の交通安全教材です。
ヒヤリハットマップで危険箇所を共有したあとは、JAFトレで危険予知や安全運転のポイントを継続的に学ぶことによって、現場で起きている危険を「知る」だけでなく、「どう防ぐか」までに昇華させることが可能です。
ヒヤリハットマップとJAFトレは非常に相性の良い組み合わせです。
危険箇所の共有と継続的な安全教育を通じて企業全体の安全意識を醸成し、事故の未然防止につなげていきましょう。
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