タクシー事故の特徴とは?ドライバーと事業者に求められる事故防止策を徹底解説!
2006年に施行された「バリアフリー新法」によって、タクシーは公共交通機関と明確に位置付けられました。
運行ルートや時間が固定されている電車や路線バスと違い、タクシーは乗客の希望に応じた発着地点間を輸送するため、個別移動の色合いが濃い乗り物です。
そのため、タクシーの乗務員には車を安全に操作する技術だけでなく、多様な地理・気象状況のもとで歩行者や自転車、ほかの車の動きを予測し、乗客とコミュニケーションを取りつつも、安全を優先するといった高度な能力が要求されます。
タクシーの事故データを見ると、発生件数そのものは長期的に減少傾向にあるものの、死亡事故については2022年から2024年まで3年連続で増加しています。
そこでこの記事では、タクシー事故の件数や特徴、実際の事故事例を紹介するとともに、タクシーの乗務員とタクシー事業者が取り組むべき事故防止策について解説します。
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タクシー事故の発生状況|過去10年を分析

国土交通省の統計による、2016年から2025年までの法人・個人タクシーの事故件数と死亡事故件数は、以下の表の通りです。
タクシーの事故件数・死亡事故件数(全国)
| 事故件数 | 死亡事故件数 | |
|---|---|---|
| 2016年 | 13,526件 | 52件 |
| 2017年 | 13,171件 | 39件 |
| 2018年 | 11,954件 | 48件 |
| 2019年 | 10,996件 | 47件 |
| 2020年 | 7,459件 | 16件 |
| 2021年 | 7,121件 | 11件 |
| 2022年 | 7,948件 | 22件 |
| 2023年 | 8,447件 | 36件 |
| 2024年 | 8,056件 | 47件 |
| 2025年 | 8,485件 | 29件 |
タクシーの事故件数は、この10年で大幅に減少しています。
特に2020年には、新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言・外出自粛の動きなどを受けて大幅に減少、その後は微増・微減を繰り返しながら2025年にかけて増加傾向にあり、同年は2020年以降の統計でワーストになっています。
一方で、死亡事故件数は2022年から2024年に3年連続で増加したものの、直近2025年では29件と、コロナ禍の影響がなかった2019年の47件と比べても大幅に減少しています。
この10年の推移をみると、10年前と比べて事故が減り安全になったともいえますが、コロナ禍の利用控えや高齢化の影響による人手不足で、タクシー利用者や稼働台数といった母数が減っただけとも考えられるため、本当の意味で安全になったと判断するのは時期尚早かもしれません。
出典:事業用自動車による交通事故件数の推移|国土交通省
参考:数字でみる自動車2026|国土交通省
タクシー事故の特徴とは

同じ公共交通機関でも、路線バスは大きい物だと全長12m近くになり、死角や内輪差が大きく運転の難易度が高い乗り物ですが、固定ルートを走り、止まる場所も決まっています。
一方でタクシーは、乗用車と同じサイズの車両を使いますが、乗客の乗車場所は毎回異なる上、空車時には乗客を探したり、運転中には目的地を確認するため乗客とのコミュニケーションを繰り返しながら運転する特長があります。
さらに、路肩での料金精算や乗客の乗り降りの対応、空車待機、通学路への進入や夜の繁華街の通行など、さまざまな状況に対し頻繁に応じなければなりません。
そのため、路線バスとは異なる事故リスクが潜在しているはずです。
ここでは、国土交通省の2024年統計をもとに、タクシー事故の特徴や原因を整理していきます。
出典:事業用自動車の交通事故統計(令和6年版)|国土交通省 物流・自動車局
他車との事故が約7割を占める
タクシーの事故類型別交通事故件数の推移(2024年抜粋)
| 人との事故 | 他車との事故 | 単独事故 | 列車 | |
|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 1,638件 | 5,777件 | 641件 | 0件 |
タクシーの事故類型別交通事故件数の内訳の推移〈他車との事故〉(2024年抜粋)
| 正面衝突 | 追突 | 出会い頭衝突 | 追越・追抜時衝突など | すれ違い時衝突など | 横断時衝突など | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 52件 | 1,486件 | 1,423件 | 646件 | 1,295件 | 875件 |
2024年に発生したタクシーの事故8,056件のうち、他車との事故は5,777件で全体の71.7%と大半を占めます。
他車との事故の内訳を見ると、最も多かったのが「追突事故」で1,486件、「出会い頭の衝突事故」が1,423件で続いています。
追突事故の原因としては、わき見運転やながら運転など前方の確認不足、前車との車間距離不足などが考えられます。
死亡事故は人対車両によって多く発生
タクシーの事故類型別交通死亡事故件数の推移(2024年抜粋)
| 人との事故 | 他車との事故 | 単独事故 | 列車 | |
|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 34件 | 9件 | 4件 | 0件 |
タクシーの事故類型別交通死亡事故件数の内訳の推移〈他車との事故〉(2024年抜粋)
| 正面衝突 | 追突 | 出会い頭衝突 | 追越・追抜時衝突など | すれ違い時衝突など | 横断時衝突など | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 3件 | 0件 | 0件 | 0件 | 5件 | 1件 |
タクシーの死亡事故47件のうち、人との事故は34件で、全体の72.3%を占めています。
他車との事故が9件、単独事故が4件であることから、人、つまり歩行者と事故を起こした場合の死亡ケースが大半を占めていることがわかります。
タクシーは夜間、繁華街などを走行することも多く、横断歩道のない場所を横断する歩行者や、道路上に横たわっている人の発見が遅れる場合があります。
歩行者は車に乗っている人と違い、何にも守られていないため、他車との事故より重大化しやすくなります。
交差点内や第一通行帯でタクシー事故が多く発生している

衝突地点別に見ると、「交差点内」で発生した事故が3,908件(うち横断歩道・自転車横断帯以外が2,694件)と全事故の48.5%を占め、続いて2,043件で「第一通行帯」となっています。
タクシーは、目的地や乗降場所に意識が向くと、急な右左折や車線変更、急停車といった行動を取りやすい傾向にあります。
特に交差点とその周辺では、歩行者や自転車、前走車、対向車など、注意するべき対象が多くなるので事故のリスクが高まります。
また、第一通行帯での事故では、路肩や歩道からタクシーを拾おうとしている客に集中したり、乗客を降ろしたあと、運転を再開しようとする場面で事故が起こりやすいといえます。
空車時は実車時より事故が発生しやすい
空車時・実車時のタクシーの交通事故件数(2024年抜粋)
| 空車時 | 実車時 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 6,094件 | 1,962件 | 8,056件 |
タクシーの走行距離1億キロあたりの交通事故件数(2024年抜粋)
| 空車時 | 実車時 | |
|---|---|---|
| 2024年 | 274.7件/億キロ | 59.4件/億キロ |
タクシーが乗客を乗せているとき(実車時)の事故件数は、乗せていないとき(空車時)に比べて約3.1倍も違いがあり、さらに走行距離1億キロあたりで見ると、約4.6倍にも差が開きます。
この数字から、走行距離の違いを考慮したとしても、空車時の事故発生率は著しく高まることがわかります。
空車時は走行しながら車道外の乗客を探すことがあり、視線や注意が歩道側に向きやすく、前方への注意が分散しやすくなります。
また空車時は実車時と比べて、緊張感が薄れやすいことも一つの原因として考えられるのではないでしょうか。
実際に起きたタクシー事故|自動車事故報告書の事例から抜粋

タクシー事故を防ぐには、実際の事故事例から教訓を得ることが有効です。
2023年1月から2024年6月までに国土交通省関東運輸局へ提出された自動車事故報告書の事例から、タクシー事故の原因や対策を考えてみましょう。
出典:タクシー事業の概要や事故の状況等について(統計資料等)|国土交通省 関東運輸局 自動車技術安全部 保安・環境課
一時停止を怠り自転車と衝突
実車中のタクシーが、一時停止線のある交差点に進入したところ、右側から直進してきた自転車と衝突する事故が発生。この事故で自転車の運転者は転倒し、重傷を負っています。
タクシーは交差点の手前で減速したものの、停止線で完全に停止せず、徐行のまま交差点へ進入してしまいました。
日差しのまぶしさも重なり、右側から直進してきた自転車の発見が遅れて衝突してしまったようです。
停止線の直前では、減速するだけでなく完全に停止する必要があります。
見通しが悪い場合は、多段階停止で安全が確認できる位置まで徐行し、再度左右を確認しましょう。
道に迷った焦りから標識を見落とし
乗客を乗せたタクシーが道に迷い、焦った状態で走行していました。
信号機のない交差点に差しかかったところ、一時停止の標識を見落としたまま右折して交差点に進入し、右側から直進してきたトラックと衝突してしまいます。
この事故では、乗客が重傷、タクシーの運転手が軽傷を負いました。
事故の要因として、道に迷った焦りによる注意力の低下、一時停止標識の見落とし、交差点での安全確認不足が挙げられます。
目的地や経路が分からなくなった場合は、安全な場所に停車して確認するようにしましょう。
無灯火で逆走するモペットと出会い頭に衝突
夜間、空車のタクシーが信号機のない交差点を直進していたところ、右側から進入してきたモペット(ペダル付き原動機付自転車)と出会い頭に衝突する事故が発生。
モペットは無灯火で一方通行を逆走しており、タクシーの運転手は気付くのが遅れ衝突を回避できず、モペットを運転していた人は転倒して死亡しました。
一方通行の道路であっても、モペットや電動キックボードなどが逆走してくる可能性を完全に否定することはできません。
「一方通行だから大丈夫だろう」と考えず、「逆走してくるかもしれない」と危険を予測する運転が必要です。
この事例では、モペット側の無灯火と一方通行の逆走に加え、無免許とヘルメット未着用も確認されています。
モペットは車両の仕様によっては「原動機付自転車」として扱われ、必要な運転免許や車両登録、自賠責保険への加入、ライトなど保安部品の装着、ヘルメットの着用などが求められます。
しかし、ユーザー側の認知が追いついておらず、意図せず違反してしまう事案が多発しています。
モペットの免許制度やルールなどについては、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
高齢化が進むタクシー業界|タクシー事業者としての取り組むべき安全管理

近年のタクシー業界では、タクシードライバーの高齢化が顕著です。
全国ハイヤー・タクシー連合会が公表した資料によると、タクシードライバーの平均年齢は56.8歳で、全産業平均の44.4歳を12.4歳上回っています。
また、全国のタクシー事故のうち、65歳以上のドライバーによる事故が占める割合は増加傾向にあり、2019年以降は50%を超えています。
高齢であることだけを事故原因とみなすのは適切ではありませんが、タクシー事業者はドライバーの加齢に伴う視力や判断力の変化は考慮する必要があります。
出典:「令和7年賃金構造基本統計調査」によるタクシー運転者の現況|全国ハイヤー・タクシー連合会
点呼で健康状態や疲労を確認する
乗務前後の点呼は、タクシー事業者が運行管理者等に実施させる重要な業務であり、単なる形式的な手続きではありません。
ドライバーの表情や受け答えを確認し、睡眠時間、体調、服薬状況などを聴取したうえで、安全に乗務できる状態かを判断する重要な業務です。
体調不良などにより安全に運転できない状態と判断した場合は、乗務予定を変更・調整する必要があります。
また、ドライバーが体調不良を申告することで不利益を受けるような雰囲気があると、ドライバーが無理をして乗務し、事故につながるおそれがあります。
事業者は無理のない乗務計画を立て、体調の変化を申告しやすい環境を整えましょう。
運行管理者の業務については、ぜひこちらの記事を参考にしてください。
健康診断や適性診断の結果を指導に活かす
健康診断や適性診断は、受けることが目的ではなく、その結果を日々の安全指導に活かす手段にすることです。
視力や聴力、持病などに注意が必要な場合は、本人への確認や医療機関での受診、治療を促すなど、必要な対応を怠らないようにしましょう。
関東運輸局のタクシーの事故事例では、複数のドライバーについて、適性診断で注意力や安全態度などに関する指摘事項が確認されています。
診断結果に課題が見られる場合は、その内容に応じた個別指導が必要です。
国土交通省が公表した事業用自動車事故調査委員会の報告書では、漫然運転による前方不注視やペダルの踏み間違いに加え、ドライバーの視力が運転免許の基準を下回るほど低下していたにもかかわらず、免許条件となっていた眼鏡等を使用していなかった事例が報告されています。
事業者には、ドライバーの健康状態や運転特性などを継続的に確認する姿勢が求められます。
参考:事業用自動車事故調査報告書〔重要調査対象事故〕タクシーの追突事故(大阪市淀川区)|国土交通省
まとめ:事故事例から継続的な安全教育につなげる

この記事では、タクシー事故の統計や実際の事例をもとに、タクシードライバーとタクシー事業者が取り組むべき事故防止策について解説しました。
タクシー事故は、交差点での一時停止不履行や安全確認不足、急ぎや焦り、道に迷ったことによる注意力の低下など、複数の要因が重なって発生しています。
タクシーに決まったコースはなく、狭い道から広い道まで住宅街や繁華街を縦横無尽に走り抜け、歩行者や自転車、ほかの車の動きを予想した運転が求められます。
過去の事故事例を単なる知識で終わらせず、事故防止につなげる必要があります。
そこで活用したいのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレは、JAFが培ってきた交通安全啓発のノウハウを活かした、e-ラーニング形式の実践的な交通安全教材です。
その中で特に紹介したいのが「ドラレコ動画」を参考にした教材です。
当社に寄せられたドライブレコーダー映像から、交通安全教育に役立つヒヤリハット事例を厳選し解説しています。
事象が発生した背景や適切な安全行動を考えることで、受講者の気づきを促し安全意識を高めます。
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