運転中のイヤホンは違反?片耳・ハンズフリーの扱いと罰則、企業が決めるべきルールを解説
運転業務をしていると、取引先や会社から電話がかかってきたり、折り返し連絡が必要になる場面があるのではないでしょうか。
しかし、運転中にスマホや携帯電話を持って通話すると、「携帯電話使用等違反」に問われる可能性があります。
さらに同行為によって事故や交通の危険を生じさせた場合、より重い処分が科されることもあります。
そのようなリスクを事前に避けるため、イヤホンなどを使用したハンズフリー通話の利用をドライバーに指導する企業があります。
現状、道路交通法には「自動車運転中のイヤホン使用」を禁止する条文が存在しません。
しかし、各都道府県の公安委員会規則では「安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態で運転すること」などを禁止しており、これに違反すると間接的に公安委員会遵守事項違反となる可能性があるため、企業は運転業務中のイヤホン使用をどう指導すべきか迷うこともあるようです。
そこでこの記事では、企業の安全運転管理者やドライバー向けに、運転業務中のイヤホンが法令や規則上どのように扱われるのか、実例をもとに判断基準を整理し、企業としてどのようにルールを整備すべきか解説します。
今気をつけるべき交通安全の話題が週次でわかる
イヤホン使用はすべて違反になるのか?|道路交通法での扱い

道路交通法には、運転中のイヤホンやヘッドホンの使用そのものを禁止する条文はありません。
そのため、「運転中であってもイヤホンを使用できる」と勘違いしがちですが、実際にその使い方が合法というにはいくつか懸念点が残ります。
各都道府県の公安委員会規則で禁止されている場合や道路交通法の他の条文に抵触する可能性があるからです。
ここでは落とし穴になりやすいポイントを分かりやすく解説します。
公安委員会遵守事項|音または声が聞こえない状態
道路交通法では「運転中のイヤホンの使用」について直接明記されていません。
しかし、多くの都道府県では、公安委員会規則によって、間接的にイヤホン使用が禁止されている場合があります。
道路交通法第71条第6号では、各都道府県の公安委員会が定める事項を車両等の運転者が守らなければならないとしています。
つまり、道路交通法で「運転中のイヤホンの使用禁止」が直接的に明記されていなくても、都道府県の公安委員会規則に反する方法でイヤホンを使用して運転していた場合、間接的に道路交通法上の公安委員会遵守事項違反になる可能性があるのです。
都道府県別の「運転中のイヤホン使用」に関する条文例
それでは公安委員会規則では、運転中のイヤホン使用条件についてどのように言及しているのでしょう。
まずは、運転中のイヤホン使用を条件付きで禁止している公安委員会規則の例を、都道府県ごとに一部抜粋して紹介します。
| 都道府県 | 規則名・条番号 | 条文内の主な表現 | 「イヤホン」の明記 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 東京都道路交通規則第8条第5号 | 「高音で」 | あり(イヤホーン等) |
| 愛知県 | 愛知県道路交通法施行細則第7条第4号 | 「大きな音量で」 | あり |
| 大阪府 | 大阪府道路交通規則第13条第4号 | 「聞くことができないような音量で」 | ヘッドホンステレオ等 |
出典:東京都道路交通規則 愛知県道路交通法施行細則 大阪府道路交通規則
このように、条文の表現やイヤホンの呼称は都道府県ごとに異なりますが、イヤホン使用の可否には機器の形状や音量、実際の使用状況が関係していることが多いです。
では、音量を控えて周囲の音が聞こえていれば、必ず違反にならないのでしょうか。
安全運転義務違反|音が聞こえていても違反となる可能性
イヤホンを使用しながらの運転中に、もし周囲の音が聞こえていたとしても、それが間違いなく合法という結論には至りません。
道路交通法第70条では、ハンドルやブレーキを確実に操作し、他人に危害をおよぼさない速度と方法で運転することが義務付けられています。
つまり、音量の大小に関わらず、通話音などに気を取られて前方の状況を見落としてしまうと、安全な方法で運転していなかったとして、安全運転義務違反に問われる可能性があります。
安全運転義務違反については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
どこからが違反になるのか?|判断基準と実例

警察庁は2023年7月、自転車利用者を対象として、イヤホン等に関する取り締まり上の留意事項を通達しています。
この通達は公安委員会規則の解釈を示したもので、同じ規定が適用される自動車の運転者にとっても合法範囲か判断する参考になります。
この通達を読み解くと、各都道府県の公安委員会規則による取り締まりが「装着していたかどうか」ではなく「周囲の音や声が聞こえていたか」を対象にしていることがわかります。
ここでは事例をもとに、それが公安委員会遵守事項違反や安全運転義務違反にあたるかどうか整理して解説します。
出典:イヤホン又はヘッドホンを使用した自転車利用者に対する交通指導取締り上の留意事項等について|警察庁
片耳・骨伝導・オープンイヤー型などの使用形態だけでは判断されない
「片耳が空いていれば周囲の音や声を聞き取ることはできるので問題ない」と判断する人がいますが、片耳のイヤホンの使用であっても、一律に違反にならないとは限りません。
安全な運転に必要な音や声が聞こえるかどうかなど、実際の使用状況がどうであったかが重要です。
同様に骨伝導型やオープンイヤー型であっても、耳を完全にふさがない構造というだけで安全な運転を阻害しないと評価されるわけではありません。
ハンズフリー通話|携帯電話使用等違反に当たらなくても違反となる可能性
例えば、片耳用のマイク付きイヤホンを使用し、スマートフォンを手に持ったり画面を注視せずにハンズフリー通話をおこなった場合です。
この条件では携帯電話使用等に該当する可能性は低いものの、ほかの違反に問われる可能性は残ります。
イヤホンが片耳用であっても、周囲の音や声が聞こえない状態であれば公安委員会遵守事項違反、前方への注意が不十分であれば安全運転義務違反に問われる可能性があります。
状況によって運転そのものを安全におこなえない可能性がある行為は控えるのが無難です。
| 公安委員会遵守事項違反 | 安全運転義務違反 | |
|---|---|---|
| 法律・規則 | 道路交通法第71条第6号、各都道府県の規則・細則 | 道路交通法第70条 |
| 反則金(大型車) | 7,000円 | 12,000円 |
| 反則金(普通車) | 6,000円 | 9,000円 |
| 基礎点数 | なし | 2点 |
誤ったイヤホン使用を放置するリスク

運転業務中の従業員が不適切にイヤホンを使用したことで交通事故を起こすと、ドライバー個人の責任問題にとどまらず、企業の安全管理体制が問われる事態に発展する可能性があります。
ここでは、JAFユーザーテストの検証結果や関係法令を根拠に、従業員が運転業務中にイヤホンを装着するリスクを紐解いていきます。
事故のリスク|手が空いていても反応は遅れる
JAFユーザーテストでは、ハンズフリー装置で通話しながら運転した場合の影響を検証しています。
この検証で、ハンズフリー通話中は通常の運転時と似た視線の軌跡をたどるものの、漫然とした状態になり、危険への反応が遅れるケースが確認されました。
横からボールが飛び出してきたシーンでは、ブレーキ動作が遅れた上、ブレーキペダルを強く踏むこともできずボールに接触。さらに別のシーンでは、ウインカーを出すのも遅れています。
手がふさがっていないからといって、安全に運転できるとは限らないことがわかります。
出典:運転中の「ながらスマホ」(JAFユーザーテスト) | JAF
難聴者や公共目的の場合の除外規定について
多くの都道府県の公安委員会規則の条文には、「難聴者が補聴器を使用する場合や、公共目的を遂行する者がその目的のための指令を受信する場合を除く」というただし書きがあります。
これを読むと「業務上の指示を受けているので、運転中に通話しても問題ない」と受け取るかもしれません。
しかし、ここでいう「公共目的を遂行する者」として想定されるのは、警察官など公共性の高い任務にあたる者です。
一般企業の従業員同士の業務連絡は含まれない可能性が高いので注意しましょう。
会社の責任|使用者責任と運行供用者責任
業務中に発生した交通事故では、当事者の従業員だけでなくその業務をおこなわせた企業に民法上の使用者責任が問われる可能性があります。
また、人身事故に発展すれば自動車損害賠償保障法上の運行供用者責任を負う場合もあります。
例えば、ドライバーによる危険なイヤホン使用を会社が知りながら放置していた場合などには、安全管理体制そのものが問題視されることでしょう。
社用車管理における企業の法律上の責任については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
イヤホンの運用|企業としてのルールづくり

イヤホンの使用が違反に該当するかは事後的な状況判断になってしまうため、この不確実さをドライバー個人に背負わせるべきではありません。
ドライバーが安心して運転に集中できる環境を整えるべく、企業としてのルールを組み立てましょう。
例えば、予防策として「運転中は電話をかけたり受けたりせず、安全な場所に停止してから折り返す」や、業務対応として「事務所から運転中と分かっている相手に架電しない」といったルールを検討してみましょう。
よくある質問

これまで解説した運転中のイヤホン使用について、企業として疑問を持ちやすい内容をQ&A形式で整理します。
片耳に装着するBluetoothイヤホンであれば問題ないですか?
片耳で使用していても、周囲の音や声が十分に聞き取れるとは限りません。
イヤホンから出力される音声に意識が向けば、たとえ片耳が空いていても危険への反応が遅れる可能性があります。
装着方法やイヤホンの形態によって例外を作らず、会話そのものの可否を判断する必要があります。
社用車で移動中にWeb会議へ参加させてもいいですか?
運転中のドライバーをWeb会議へ参加させることは絶対に避けてください。
画面を注視すれば携帯電話使用等違反、会話に気を取られれば安全運転義務違反に問われる場合があり、会議であればそれらに該当する可能性が非常に高くなります。
映像ではなく、音声で聞いていてもらうだけといった条件での参加も同様です。
安全に駐車できる場所と時間を確保して、駐車中に参加する運用としてください。
配送や現場で運転中にインカムを使う場合はどうなりますか?
業務上必要な場合であっても、周囲の音が聞こえる状態であることが前提になります。
従業員は根拠もなく、自身の業務内容を規則上の「公共目的を遂行する者」にあたると都合良く解釈しないよう気を付けましょう。
業務上やむを得ずインカムを使用する場合は、使用する機器、音量、利用場面、通信方法などを明確化するとともに、管轄警察に確認を取った方が確実です。
まとめ:イヤホンは「必要な音と声が聞こえるか」「周囲への注意が十分か」で判断される

この記事では、運転中のイヤホン使用が法令上どのように扱われるのか、企業が定める社用車の運用ルール、よくある疑問点をQ&A形式で解説しました。
道路交通法に一律の禁止規定はなく、イヤホンを装着しているだけでただちに違反とみなされるわけではありません。
ただし、安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態であれば、公安委員会遵守事項違反、通話や音声に気を取られて前方への注意が不十分になれば、安全運転義務違反に問われる場合があります。
ルールの抜け穴を探して条文に合わせた例外を作り出すのではなく、安全な運転をおこなうためにはどうするべきかを第一に据えた運用を検討し、ルール化することが求められます。
また、ルールを整備したからといって安心してはいけません。
実際の運転場面でイヤホンを使用を判断するのはドライバー本人ですが、組織として判断に迷わないルールを定めることが求められ、ドライバーが決めたルールを理解し守り続けるためには、継続的な指導・教育が欠かせません。
そこで活用したいのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
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