「災害の多い国」日本で企業ができる車の防災対策とは?地震・台風・大雨・大雪それぞれの準備を紹介
日本は自然災害が多い「災害大国」と呼ばれています。
災害時において車は、風雨から逃れるための一時避難場所として、また緊急連絡や情報収集に役立つ電子機器などの電源として活用できる場合があります。
その一方、災害レベルの事象が起きている状況で安易に車を移動手段として使えば、二次災害を自ら招く可能性があり、災害時における車の利用については臨機応変かつ慎重に是非を見極めるべきです。
冠水道路への無謀な進入や大雪による立ち往生、地震発生時の避難判断など、人命に関わる二次災害を防ぐためには、防災グッズの準備だけでなく防災意識を高めるための指導が欠かせません。
地震・台風・大雨・大雪などいつ起こるか予測のつきづらい自然の猛威に対し、従業員の命を守るために企業主導で防災対策を立てていきましょう。
そこでこの記事では、社用車に備えておくべき防災グッズや、防災指導に活かせるアイデアを災害別に整理しながら紹介します。
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目次
車の防災対策|企業としての取り組み

防災とは、地震や台風などの自然災害に備え、被害を最小限に抑えるための対策や行動のことをいい、被害を防ぐ「予防」と被害を減らす「減災」の2つに大きく分けられます。
社用車を持つ企業の防災対策では、災害発生時に従業員が自ら命を守る行動が取れるよう、備品・燃料などといった減災アイテムの準備をはじめ、二次災害を防ぐ運転方法の指導など、企業主導で対策することが重要です。
ちなみに、毎年9月1日が「防災の日」、9月1日を中心とした8月30日から9月5日までの期間は「防災週間」、9月全体は「防災月間」となっています。
防災を見直す期間として活用してみてください。
日常的な防災意識を|企業としての姿勢
営業・配達・訪問などといった業務遂行のためには社用車が欠かせないといった企業も多いでしょう。
そのような日々の業務中に、「大きな地震が発生する」「台風や急な豪雨で道路が冠水する」「大雪で立ち往生する」といった、危険な状況に巻き込まれるケースは十分あり得ることです。
そのため社用車を運用する企業はもちろん、運転するドライバー個人においても、万が一に備えて防災・減災対策を整えておくことが重要です。
日ごろから必要な備品やルールを準備しておけば、自分自身の安全を守るだけでなく、周囲の人を助ける行動にもつなげられます。
企業として備える効果|従業員と信頼を守る
災害時にも関わらず、会社の看板を背負った社用車を運転していれば、社会から企業の安全意識(危機管理)・倫理観が問われる場合があります。
また、運転が必要な状況だとしても「備品がない」「燃料が少ない」「危険回避ルールが共有されていない」といった状態であれば、安全確保が難しくなり、従業員を危険に晒すことも。
さらには災害時に社用車が道路上で立ち往生したり、不適切な場所に駐車して緊急車両の通行を妨げたりすれば、企業の管理責任や信用低下につながるおそれがあります。
道路交通法施行規則第9条の10では、安全運転管理者の義務として、異常な気象や天災などにより安全な運転の確保が難しい場合、ドライバーに必要な指示するなど、安全を確保するための措置を講じることが定められています。
だからこそ、社用車の防災対策は仕事で車を使う企業・従業員全体で考えるべきテーマといえます。
安全運転管理者の業務については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。
出典:道路交通法施行規則 第9条の10 安全運転管理者の義務 | e-Gov 法令検索
社用車に備えておきたい防災グッズ

災害発生時に社用車が一時的な退避場所になることを想定し、最低限の防災用品を備えておくことが大切です。
ただし、防災用品を充実させるがあまり、車内のスペースを圧迫して業務に支障が出ては本末転倒です。
命を守るために優先すべきものはなにか、数ある防災用品の中から選択するようにしましょう。
1~2日の車内待機を想定した防災グッズリスト
土砂崩れや地震、突発的な大雪による道路の通行止めなどによって、車内での一時的な避難を余儀なくされる可能性も考えられます。
1〜2日を車中で耐え凌ぐ程度を想定した必要最低限の備蓄であれば、以下のような備品を推奨します。
- 飲料水
人が生きるうえで一番必要なのは水です。水さえあれば1カ月近くは生きることができるとされています。数日間立ち往生を強いられるときには、水の確保は欠かせません。
防災備蓄の目安としては、1人あたり1日3Lが推奨されています。
ただし、社用車に常備するには積載スペースの制限があるため、走行エリアや季節に応じて現実的な量を備えておきましょう。 - 非常食
非常時に生命をつなぐ、また心の安定をもたらすためには食料が必要です。
夏場も車中に積んだままを想定し、高温環境での保管に対応した保存期限の長い備蓄食を用意しておくと安心です。
- 携帯トイレ・生理用品
長時間に及ぶ車中待機を想定した時、生理現象の問題は避けられません。
携帯トイレを選ぶ際は衛生面を考慮し、密閉性が高い袋や凝固剤の多く入ったものがおすすめです。
生理用品は女性社員の意見をもとに必要なものを用意すると安心です。
- 防寒具
冬場の災害時には、ブランケット、アルミシートなどを用意しておくと役立ちます。
一酸化炭素中毒を防止するために、降雪時はできるだけエンジンを切り暖房に頼らない防寒策が必要になることもあります。
- 道具・工具
降雪中に立ち往生した場合は、一酸化炭素中毒を防止するため、車の周囲やマフラー(排気管)周囲に積もった雪を取り除く必要があり、車載用のスコップを用意しておくと安心です。
また、豪雨や冠水によって車が水没した場合、水圧でドアが開かず、車内に閉じ込められるおそれがあります。ドアガラスを割るための脱出用ハンマーを用意し、車内の手の届く場所に備えておきましょう。
そのほか、懐中電灯や軍手、モバイルバッテリー(※)・乾電池(※)・ラジオ付属の手回し充電器なども用意しておくと、電源が限られる場面での情報収集に役立ちます。
※モバイルバッテリーなどのリチウムイオン電池使用製品は、高温環境に置くと発火などの事故リスクがあります。トランク内などの高温になりやすい場所に長時間放置せず、必要に応じて車外で保管・管理しましょう。また、乾電池についても、直射日光や湿気が多い場所を避け、使用期限や液漏れの有無を定期的に確認しましょう。
参考:Vol.684 要注意!暑い時期のリチウムイオン電池 | 消費者庁
参考:車内に用意しておきたい防災用品とは? | JAF
参考:災害に備えた家庭備蓄のポイント | 政府広報オンライン
季節に合わせ中身を見直す
車内は寒暖差が大きく、季節によって必要な防災用品も変わります。
夏場は虫よけスプレーや冷却シート、冬場は寝袋やカイロなど、季節ごとに防災用品を入れ替えてみましょう。
また、防災用品を車内に積んで安心せず、年に数回は点検日を設けるとよいでしょう。水・食料の賞味期限、備品の劣化状態などを確認し、期限が近いものから使い使った分を買い足す「ローリングストック」の考え方を取り入れると、効率よく備蓄を維持できます。
防災用品の中身を定期的に見直し、災害時に安心して使える状態を保つことが重要です。
参考:今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方 | 政府広報オンライン
企業ごとの社用車防災対策

災害時にはその種類によって取るべき行動が異なります。
災害ごとのリスクを把握し、社内で行動ルールを共有しておくことで、従業員の安全確保につながります。
大地震発生時は慌てず安全な場所で停車

東日本大震災をきっかけに、大地震が発生した際の適切な避難行動とは何か、あらためて考え直した方は少なくないはずです。
車を運転中に大地震が発生した場合、慌ててその場に停止するのではなく、周囲の状況を確認しながら速度を落とし、道路の左側など安全な場所に停車することがまず第一です。
停車後はラジオやスマートフォンで地震・交通情報を確認し、会社や管理者へ安否と現在地を共有しましょう。
また、やむを得ず車を置いて避難する場合は、できるだけ道路の外側に移動し、エンジン停止、キーを車内に残してドアはロックしないなど、避難者の通行や災害応急対策の妨げにならないようにすることが求められます。
台風・大雨時はハザードマップを確認し冠水しそうな道路に近づかない

局地的な集中豪雨が発生し、雨量がポンプなどの排水能力を超えると、アンダーパスをはじめ道路の冠水が起こりやすくなります。
台風や大雨時には複数河川の合流地付近をはじめ、高潮による海岸沿い・低地などで道路が冠水してしまうこともあります。
冠水の深さや路面状況は一目でわかりにくく、水深が浅いとして安易に進入すれば、水没・車両故障につながるおそれがあります。
社用車で移動中に冠水している道路を見つけたら、無理に進入せず迂回することが原則です。
洪水浸水想定区域を含む市町村では、洪水ハザードマップが作成されています。
国土交通省のハザードマップポータルサイトを事前に確認し、社内で近隣やよく使うルート上の冠水しやすい場所を把握・共有しておくとよいでしょう。
道路が冠水した時の対策と走行時の注意点は以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
大雪時は立ち往生の原因車にならないよう冬季前の準備を徹底

近年、「大雪による高速道路通行止めがかかり、数日に渡って立ち往生が発生」といった報道を目にしますが、その原因の一つとして「冬用タイヤやチェーンの未装着」があります。
積雪または凍結した路面では、スタッドレスタイヤ(オールシーズンタイヤ)やタイヤチェーンといった滑り止めの措置が「都道府県道路交通法施行細則」または「道路交通法規則」によって義務づけられています。
冬用タイヤやチェーン未装着での雪道走行は、立ち往生の原因車になるだけでなく、スリップの危険性も高まり交通事故に発展しかねません。
冬本番前に、タイヤの履き替えやチェーンの準備を忘れないようにしましょう。
大雪が予報されている場合には、不要不急の運行を控える、早めに帰社させるなど、会社として運行判断の基準を設けておくことも重要です。
社用車の冬準備をはじめ、大雪で立ち往生した際の危険性と対策について、以下の記事で解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
日ごろから満タン運動|企業のBCP対策

災害時には燃料の供給不安が起こりやすく、ガソリンスタンドに長い列ができることがあります。
内閣府の防災情報では、災害時に慌てて給油に走ることのないように、日ごろから車の燃料を満タンにしておく「満タン運動」を推奨しています。
給油待ちの行列が発生すれば、災害復旧や応急対応に必要な緊急車両の通行や給油にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。
燃料満タン運動は、企業にとっても有効なBCP対策といえます。
例えば、「燃料が半分を下回ったら給油」「帰社時に燃料残量を確認し報告」などのルールを設け、災害時に利用可能な給油所、優先的に使用する車両などを整理することも効果的です。
出典:防災の動き|内閣府
まとめ: 車の防災対策と安全教育をセットで考える
この記事では、災害時を想定して、社用車内に備えておきたい最低限の防災用品リストや、災害別の防災対策を解説しました。
社用車の場合、従業員が災害時にどのように判断して行動するかを会社としてルール化しておくことで、災害に直面した従業員地震の安全確保はもちろん、企業の信用も守ることができます。
一方で、災害時には平常時以上に冷静な判断が求められます。
防災対策や安全運転の知識というのは、一度伝えて身につくものではないため、日ごろから危険を予測した安全行動を習慣化させる必要があります。
そこで紹介したのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレは、交通安全に関する実践的な知識をオンラインで学べるe-ラーニング形式の教材です。
この教材は、パソコンやスマートフォンから受講できるため、業務の合間で効率よく学習できるのが特徴です。
JAFトレを活用することで、社用車を運転する従業員の安全意識を高め、災害に強い企業運営を目指していきましょう。
今気をつけるべき交通安全の話題が週次でわかる


