運転中に地震が起きたら?命を守るために取るべき行動と企業の備えを徹底解説
いわゆる都市直下型地震であった阪神・淡路大震災の発災から31年以上、さらに最大震度7を記録し、観測史上最大の津波が起こった東日本大震災の発災から15年以上が経過しました。
地震調査研究推進本部の調査では、今後30年以内に南関東地域でマグニチュード7程度の地震が70%程度の確率で発生するとされていて、「今日この瞬間に起きても不思議ではない」切迫した状況です。
車の運転中はおおむね震度4で揺れに気付き、震度5強で運転が困難になるといわれています。
大地震だけでなく、たびたび起こる中規模の地震であっても事故や二次災害に巻き込まれるリスクは高まるため、企業ドライバーはもちろん、安全運転管理者や運行管理者は、運転中の被災リスクを日頃から考えておく必要があります。
地震が発生した瞬間からの行動一つひとつが、自身の命はもちろん、同乗者の生存を大きく左右するため、運転中に地震が起きても落ち着いて対処できるよう備えておきましょう。
この記事では、過去に起きた大地震による交通への影響を踏まえながら、運転中に地震が起きた場合の推奨行動や避難方法、企業として準備しておきたい安全対策について解説します。
地震・台風・大雨・大雪に対して従業員の命を守る準備を!
出典:相模トラフ | 地震調査研究推進本部事務局
出典:運転中に地震を感じたら|国土交通省中部地方整備局 静岡国道事務所
運転中の地震|気付く?気付かない?

運転中は、地震が起きても強風や路面の凹凸と勘違いすることも多く、地震の揺れであることに気付かないことがあります。
気象庁が作成した震度階級関連解説表によると、「自動車を運転していて、揺れに気付く人がいる」のは震度4からとされています。
それでは、運転中に地震が発生すると具体的にどのようなことが起き、どのような危険が発生するのでしょうか。
揺れによって車の操作が不安定になる
運転中に地震が発生すると、車体が左右に振られ、ハンドルを取られることがあります。
このとき、焦って急ハンドルを切ったり、反射的に急ブレーキを踏んだりすると、まだ地震の発生に気付いていない周囲の車両との接触・追突事故につながる危険性があります。
道路や信号機が正常に使えなくなる
地震の規模にもよりますが、道路の亀裂や陥没、瓦礫の散乱、橋梁の損傷、土砂崩れ、水道管の破裂による冠水などが原因で交通障害が発生する可能性があります。
さらに停電によって信号が停止すれば事故を誘発するリスクが高まるなど、二次的な被害拡大も懸念されます。
渋滞の発生
揺れが収まったとしても、交通障害により道路が寸断されて迂回ルートに車両が集中したり、緊急点検による高速道路の閉鎖によって一般道の交通量が増え、大渋滞が発生する可能性があります。
東日本大震災では、震度5強を観測した東京都区部で16時台~23時台の平均速度が6.2km/h、平均速度15km/hを下回る渋滞が翌朝6時まで継続しました。
渋滞時は集中力が途切れ漫然運転になりやすく、前方不注意による追突事故を起こすことがあります。
地震による過去の大規模災害から学ぶ教訓

過去の大きな地震から学ぶことで、繰り返される災害の教訓や、いま私たちが取るべき具体的な防災対策が見えてきます。
ここでは過去の大規模地震の例から、地震発生後の運転にともなうリスクを確認します。
2026年|令和8年熊本地震
2026年7月28日、熊本県熊本地方で最大震度7の地震を観測し、本震後も震度5弱の余震が繰り返されました。
この地震では、高速道路が上下にずれ動いたり橋梁が損傷したほか、一部で路面の隆起や地割れが発生するなどし、発災直後には約142kmにわたって道路規制が実施されています。
京都光華大学社会学部社会共創学科がリリースした資料によると、2016年に起きた熊本地震では、余震の発生が長く続いたことで建物自体に不安を抱き、避難を経験した人の約7割が車中泊を選んだといい、中には知識不足からエコノミークラス症候群などで亡くなった人もいたそうです。
今回の熊本地震でも大勢の人が車中泊による避難生活を送っており、発災から2日目には熱中症による死亡者が出たことが報道によって明らかになっています。
車中泊にはプライバシーが守られるなどといったメリットも多いですが、リスクやデメリットについても地震が起こる前から理解しておくべきであるといえます。
出典:令和8年熊本地震による被害状況等について|国土交通省
出典:避難者の約7割が経験した「車中泊」命を奪うエコノミークラス症候群にどう備えるか|京都光華大学 社会学部 社会共創学科
2011年|東日本大震災
2011年3月11日、三陸沖(牡鹿半島の東南東約130km付近)を震源とする東北地方太平洋沖地震が発生しました。
国内観測史上最大の津波が発生するなど東北地方を中心に壊滅的な被害となったほか、日本全国広い範囲に波及した地震です。
内閣府が被災者におこなったインタビューでは、神奈川県川崎市内に勤務するトラックドライバーが地震直後にマイカーで都内の自宅へ帰宅しようとしたところ、首都高速道路が通行止めとなり、停電で信号が機能せず、車道が大渋滞となり、帰宅まで12時間を要したことを振り返っています。
本人は「自分のようなマイカーで帰宅した人によって道路が渋滞し、救急車などの緊急車両に影響を与えてしまった」と自らの行動を反省し今後の教訓としています。
2024年|令和6年能登半島地震
2024年1月1日、石川県能登地方を震源とした最大震度7の地震が発生しました。
能登半島の大動脈と言われる国道249号をはじめ、能越自動車道など多くの道路に崩落、土砂崩れ、ひび割れ、段差が生じ、特に石川県においては、奥能登全体が孤立状態とも呼べるようなアクセス困難な状況に陥りました。
これにより支援物資の運搬やライフラインに大きな支障が生じ、半島内の幹線道路の8割を復旧させることができたのは、災害後8日が経ってからのことでした。
このようなケースに備えて、防災用品を用意しておくことの大切さを改めて学ぶきっかけになった地震ともいえます。
出典:令和6年版防災白書第2章第3節 インフラ・ライフライン等の被害への対応|内閣府
運転中に揺れを感じたらドライバーはどうする?

運転中に地震の揺れを感じた場合、その後の行動を誤ると、周囲の車両や人を巻き込む事故や二次災害につながるおそれがあります。
警察庁とJAFの推奨行動から、地震発生時にドライバーが取るべき行動をまとめてみたので参考にしてみてください。
- 慌てずに道路の左側に停止する
運転中にスマートフォンで緊急地震速報を受信したり、強い揺れを感じたとしても、慌てて急ブレーキをかけて停止するのは危険です。
周囲の車両が地震の発生に気付いていない可能性があるので、まずは周辺の状況を確認します。
ハザードランプを点滅させて周囲に注意を促し、急ブレーキや急ハンドルを避けてゆっくり速度を落とし、できるだけ安全な方法で道路の左側へ停止させます。 - 停止後は揺れが収まるまで車内で待機し情報収集
車を安全に停止させたとしても、すぐに車外に出るのは避けましょう。
揺れによる落下物や走行車両との接触など、車外に出ることで別の危険に遭遇する可能性があります。
揺れが収まるまで車内に待機し、ラジオやテレビ、スマートフォンなどで地震情報や交通情報を確認します。道路の被害状況や避難情報などを把握し、周囲の状況に応じて次の行動を判断しましょう。 - 運転を続ける場合は道路状況に十分注意する
揺れが収まり運転を続けようとした場合、いつもと同じように走行できるとは限りません。
大規模な地震後は、道路の損壊や落下物などによって通行できない可能性があります。また、停電によって信号機が作動していないことも考えられます。
普段以上に速度を抑え、周囲の交通状況を十分に確認する必要があります。 - 車を置いて避難するときはキーを車内に残す
車を置いて避難する必要がある場合、緊急車両の通行の妨げにならないよう、可能な限り道路外へ移動させましょう。
道路上に車を置かざるを得ないときは、なるべく左側に寄せ、エンジンを止め、パーキングブレーキをかけて窓を閉めます。
その際、ドアはロックせず、キーを付けたままにするか運転席など車内の分かりやすい場所に置いておきます。
避難する人の通行や災害応急対策の妨げとなる場所には、駐車しないように注意しましょう。
地震のような災害発生時には張り詰めた緊張による疲労や、それが解消された(されつつある)時の気の緩み、そして混乱のさなか、いつもとは異なる行動心理が働くことも考えられます。
想像にとらわれず、最善を尽くし、自らが率先避難者であると自覚した行動を取ってください。
参考:大地震が発生したときに運転者がとるべき措置|警察庁Webサイト
参考:クルマを運転中、大きな地震の発生や緊急地震速報があったらどうすべき? | JAF クルマ何でも質問箱
企業が備えておくべき地震発生時の対策

業務中に大地震が発生すると、ドライバーが会社の指示を受けられない可能性があります。
そのため企業としては安全を確保するため、万が一に備えた事前の対策が欠かせません。
運行中止の判断基準を決める
安全を最優先した判断基準をあらかじめ決めておきましょう。
例えば、「運転中に震度5弱以上を観測したら、上長の指示を待たずに運行を中止する」などといった内容です。
地震後に帰社や帰宅を命じると、道路の混雑や通行止めに巻き込まれる可能性があります。
安全な場所にいるドライバーは、むやみに移動せず、その場で待機させる判断も必要です。
東京都では先の東日本大震災を踏まえ、大規模災害時に「むやみに移動を開始しない」という方針が示されています。
企業においても、一斉帰宅の抑制と家族等の安否確認について、それぞれ事前に対策を講じておきましょう。
社用車に防災用品を備える

社用車には、飲料水や非常食、懐中電灯や救急用品などの防災用品を備えておくと安心です。
しかし、あれもこれもと用意して通常業務に支障が出ては本末転倒なので、積載量や保管スペースを考慮し、必要な物を必要な分だけ備蓄するようにしましょう。
また、防災用品は積んだままにせず、消費期限や故障の有無などの定期的な確認が必須です。
社用車に備えるべき防災グッズについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
よくある質問

これまで解説した運転中の地震発生について、企業として疑問を持ちやすい内容をQ&A形式で整理します。
トンネルや橋の上で地震が起きたらどうしますか?
急ブレーキを避け、周囲の安全を確認しながら徐々に減速してください。
トンネル内や橋の上など、路肩が狭く、その場に停止する方が危険な場合があります。
無理に急停止せず、安全に走行できる範囲で非常駐車帯や広い場所に避難しましょう。
津波警報が発令されたら社用車で高台へ避難すべきですか?
津波警報が発令されたら、徒歩避難が原則です。
人的被害を軽減するためにも車は使わず、徒歩で安全な場所に避難してください。
多くの人が一斉に車で避難すると、渋滞や交通事故が発生し、逃げ遅れにつながるおそれがあります。
ただし、避難場所までの距離が遠い場合や、要配慮者をともなう場合など、状況によっては車を使わざるを得ないケースがあります。
あらかじめ地域の避難計画や避難経路を確認し、それに従って行動することが重要です。
出典:令和8年版 防災白書 特集第3章第4節4-3 地震が起こったら|内閣府
揺れが収まったら、すぐに会社や自宅に向かってもよいですか?
すぐに移動を開始せず、安全な場所で待機して地震情報や道路交通情報を確認しましょう。
特に大規模災害時は、多くの人が一斉に移動することで道路の混雑を招き、緊急車両の通行や救助活動の妨げになるおそれがあります。
周囲の安全や道路状況を確認し、必要に応じて移動を判断しましょう。
まとめ:万が一に備えるには日ごろの教育が必要不可欠

この記事では、実際に起きた大地震の事例を踏まえて、運転中に地震が起きた場合の行動や、準備しておきたい安全対策について解説しました。
過去を振り返ると、一般車両によって起こった渋滞が、緊急車両や支援物資輸送の妨げとなり、復興の妨げとなった事例があります。
過去の災害から教訓を得て適切な避難行動をとること、そしてドライバーを抱える企業は従業員の安全を第一とし、その後の運行指示を与えなくてはいけません。
とはいえ、大地震発生時は通信インフラが断絶する可能性もあり、指示系統が平常でなくなる可能性もあります。
そのような緊急時にも適切な判断・行動を取れるドライバーを育成するためには、日ごろの安全教育が重要になります。
そこで活用したいのが、JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレは、JAFが長年培ってきた交通安全の知見をもとにした、企業の安全教育を支援するオンライン学習です。
従業員の安全を優先する意識の醸成に役立つツールとして、実際の交通場面を想定した実践的な教材を提供。
PCが苦手な方でも簡単に操作のできる学習状況可視化のための管理機能も充実しています。
ドライバーが地震などの緊急時に冷静に安全な行動を取れるよう、JAFトレを活用した一人ひとりに寄り添った指導で危機管理能力を高めていきましょう。
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